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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

チュズムチ

高校を卒業する姪から、チュズムチの仕事をもらった。チュズムチとは、トルクメン刺繍のための図案を描く職人のことだ。月曜日に「水曜日までにアンナック用の模様を10本描いてほしい」と依頼があった。つまりは、二日のあいだに10本を描かなければならない。家事や鶏の世話の合間にできるだろうか? と思いつつも、これは自分のトレーニングになると思い、引き受けた。わたしの作図が上手だということで、相場よりも高い値段を姪が交渉してきてくれたのだが、それは自分の店の商品を作る際にわたしが支払う金額よりも低かった。


できました、10本。10種類の模様を描くつもりだったが、途中で断念して5種類の模様を2本ずつ描いた。描きながら、アンナックは誰が刺すのか、どこからこの仕事をもらってきたのかなど、姪に聞いてみた。これらは学校に持っていって、彼女と同じくデザインを習っている学生が刺すそうだ。これを持っていくと、姪のポイントがつく(?)というので、「ワタシが働く、アンタの査定が上がるアルネ!」などと恩着せがましく言ってみたのだが、彼女は「?」といった顔をしていた。それもそのはず、後でハリルに聞いたら、これらは彼女たちの試験に使われるそうだ。つまり、学生がそれぞれの色で刺繍を施して、それが採点されるということだった。わたしのトルクメン語が未熟なために、こういった会話の成り立たなさはよく起こる。

ざくろ

名称分からず

鳥の羽

ハート

名称分からず

ちなみに、試験を受ける学生がこの模様の描かれた布を買うそうだ。わたしの報酬は、彼女たちからもらうことになる。
描くだけならまだしも、この布を縫うのも仕事のうちに入っていて、その方がよっぽど時間がかかった。しかも、布代はわたし持ち! 余った布で作ったので、問題ないけれど。

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ひよこ誕生

約3週間前から、3羽の鶏が卵を温めている。そしてついに昨日から、卵が孵り始めた。1羽につき12~15個の卵を温めていたのだが、無精卵だったり、そのほかの理由で状態の悪い卵は、途中で雌鶏が壊してしまう。今回は暑くて卵の質がよくないせいか、最後の数日になると多くの卵は残っていなかった。


それでも5羽以上、孵した鶏もいる。雌鶏の羽の脇からちょこんと顔を出したひよこを見るのは、とても楽しいことだ。雌鶏の上に乗っているのもいる。手前の割れかけの卵は、これから雛が出てくるところだ。


茶色の鶏は、ドラム缶の中で卵を温めていた。しかし途中からもう一羽、別の鶏が彼女の上に乗ったり卵を独占したりして、最後までドラム缶の中に一緒にいた。家禽小屋に移した時点で、2羽目は外に出したけれど、まだ座っているようだったら、新しく卵を置くかもしれない。


この鶏も、元は別の鶏が座っていたのを横取りして、ついには乗っ取ってしまった。卵を奪われた鶏は、あっさりと普通の生活に戻ったようだ。卵は2羽だけ孵ったけれど、残る5個の卵はおそらく腐っている。腐った卵は、最後にはポンッ! と音を立てて破裂するのだ。
家禽小屋には、まだ放し飼いにするほどの大きさに成長していない雛が2羽だけいたのだが、卵を産み始めた3羽とそのひよこたちを新たに移し入れた。今のところ、それぞれの家族がそれぞれの隅に落ち着いている。
放し飼いにした鶏は、雛を含めて全部で34羽になった。50羽になる日も近いだろう。みんな美しい鶏に育ち、わたしは胸がいっぱいだ。

わたしの花壇を荒らすのだけは勘弁してほしいが


愛しのキティまで。やめて!

無花果ジャム

近所の親戚の家から、ハリルが無花果をもらってきた。この家の無花果は大粒で、うっすらと紫がかった緑色だ。


無花果の味は、それぞれ違っている。うちの隣の家の紫色の無花果がわたしの好みなのだが、それは少し酸味がありながらもあまいもの。義母の家のはものすごくあまい! 今日もらった大粒のは、そのどちらの特徴とも一致しなかった。量もあるし、今年初めてのジャムにしてみることにした。

黄桃と無花果

洗って適当な大きさに切ったものに、砂糖をまぶして数時間置いてから、煮ている。無花果は、皮を剥いた。切らしているのでレモンジュースは入れなかったが、どちらもペクチンたっぷりで簡単にとろっとしたジャムができた。


今日はちょっとうれしいことがあった。食器を買ったのだ。コップは4個、ヨーグルトを入れる器は3個まで減ってしまったので、それぞれ6個ずつ買い足した。


クミシュテペの大通りにある店にハリルに連れていってもらい、二軒目でこれらを見つけた。クミシュテペでは、ガラス製品は安価で比較的質のいいものを買える。そうはいっても、イラン製のものは形の完成度が低く、美しくない(とわたしが感じる)ものがほとんどだし、明らかにリサイクルしたような変な色のもある。サイズも日本と同じく、やや小さめなのが困る。またイラン人はキラキラしたものや凝った装飾が大好きなので、ガラスのコップも切り込みが入ったものなどが多い。でもそれは、お茶の色がついて取りにくいので、わたしは使いたくないのだった。
お店はおじいさんが一人で店番をしていて、店内の商品には砂がたっぷりかかっている。さすが砂漠、そういえばうちの中も大差ないかもしれない。イランのお茶を飲むためのコップは、耐熱性のガラスがほとんどで、十数種類のサンプルがカウンターの上に乗っていたけれど、魅力的なのはなかった。なので、妥協してその中で今持っているのと同じ形を6個買った。おじいさんは6個セットと言ったけれど、お金を払ったらそこらじゅうから砂埃の分厚く乗った6個を集めてきて、新聞紙と広告の紙で包んでいた。ヨーグルトの器は「パランセ」なので少し高かったが、おそらく三年以上売れないままカウンターに乗っていたんだと思う。簡易包装の内外に砂がかかり、シールは劣化してなかなか取れなかった。次回行くときは、カメラを持参したいと思う。ちなみにパランセとは、フレンチという意味だ。もちろんフランスからの輸入品ではなく(経済制裁で輸入品はない)、昔輸入したフランスの古い工場を使って作ったイラン製だと思う。"Luminarc" というブランドのシールがついていた。
買物が終わったあと、おじいさんは笑顔だった。何度かその店に行ったことがあるけれど、笑顔は初めて見た。たくさん売れてうれしかったのかな?


新しいコップでアイスカフェオレを飲んだ。この形は古典的なものだと思う。ガラスの質は悪いし、型もだいぶ歪んでいるようだ。しかし1個35円くらいだし、これからは割れてもあまり気にしないようにしよう。
散々文句を書いたようだが、ガラスのコップ一つ買うにも選択肢がほとんどないクミシュテペ、そんな状況は、いいところだと思うこともある。

ハリネズミ

夜の9時。またハリネズミが出没した。今度は家の前の道路で、タローとジローに挟まれて身動きが取れなくなっているところを発見。一晩中、犬が吠えても困るので、ハリネズミは段ボールに入れて、玄関に置くことにした。そのまま懐いたら飼ってもいいかと思ったのだ。


なんだか前夜に見たのとは違う気がする。なにが違うって、大きな耳が全開になっているではないか。絵本で見たことがあるハリネズミは、比較的小さな、まるみを帯びた耳をつけていたけれど、イランのは違うようだ。
その晩は器に牛乳を入れて、段ボール箱の半分だけ蓋をしておいた。トラップとして、鶏の卵も1個まるごと置いておいた。


翌日も一日中、イチジクをやったりブドウをやったりしてみたものの、このハリネズミは果物には手をつけなかった。それから卵もそのままだったので、庭のドラム缶の中の卵を彼が食べた証拠は掴めなかった。


何度もフラッシュをたいて申し訳ない。ハリネズミはモグラの仲間なので、明るい光は嫌いだろう。段ボール箱という空間も狭すぎるし、餌もよく分からず、彼にストレスを与えているだけのような気がしたので、日が暮れたあと、家の前に放すことにした。ちなみに、ハリネズミは怒っているようで、近づくと「シャーッ! シャーッ!」という音を出していた。


本当は南庭に持っていってほしかったのだが、万が一このハリネズミにこどもがいたとしたら、まずいことになると思い直した。ハリルはフィンランドで野生のハリネズミを餌付けして飼ったことがあるらしく、おっぱいにミルクがあるかどうか見てみろというのだが、触るとボール状になって体の内側を隠してしまうので、それは無理だった。家の前からどこへ向かうのか? 追ってみたが、向かいの家の塀沿いに水路の方へ歩き、5メートルくらいのところで藪に潜ってしまい、結局分からなかった。軟禁されるというひどい目にあったので、もう来ないかな?

市場

今週は煮込みを作ってほしいと、ハリルがサブジを買ってきた。

スフラの上でひもを解いて、汚れた部分や不要な部分を除く

きれいにした状態で、水洗いをする

ところがコリアンダーもタラゴンも、まったく香りがしないどころか、なんだか変なにおいがした。ハリルに訴えると、そういえばこれはテヘランから来たサブジだと売り手が言っていたそうだ。なぜテヘラン近郊で育ったサブジがクミシュテペで売られているかというと、安いからだそうだ。逆に、地方で育った香り高いサブジはテヘランで売られるのだそうだ。真偽のほどは分からないが、これなら買う意味がないくらいのサブジだった。タラゴンは捨てて、ゴルメサブジにするコリアンダー、イタリアンパセリ、ディル、チャイブは一応炒めておいた。


今週もトマトはひとカゴ買ってきた。これは、二人で二週間くらいで食べきる。ラタトゥイユとトマトソースを鍋いっぱいに作ったあとでも、冷蔵庫に入りきらなかった。



トマト専用の引き出し


ハリルはバイクで買物に行くのだが、大きなメロンを7個とトマト十数キロ、そのほかにも果物や野菜をたくさん持って帰ってきた。一体どうやって積んでいるのだろう? ときどき、割れたスイカやメロンを持って帰ってくるので、途中で転ぶこともあるのだろう。そういうときは、とても悔しそうにしている(果物を失ったことを)。

自然という世界

先日、放し飼いにしていた雛(小さな鶏)が、一羽だけいなくなった。朝に晩に鶏の数を数えているのだが、ある朝、一羽足りないことに気がついたのだった。いなくなった理由については決め手となる手がかりもなく、がっかりして諦めている。
一番高い可能性としては、タローかジローが食べたということだ。断然、タローが怪しい。別の朝早く、鶏の異常な鳴き声がしたのでハリルが窓の外を見ると、タローが雛を追っていたそうだ。タローは特におとなしい性質の犬だが、ときどき鶏がたむろしている牛小屋の方に一人で向かうので、以前から観察していた。けれど、日向ぼっこをしたり、日陰を楽しんだりしている様子しか見たことがないし、これまで鶏の数は減っていなかった。あのおとなしそうな瞳の奥には、じつは悪いやつが潜んでいるんじゃないかと何度も疑ってみたけれど、やはりタローはバグティのような穏やかな性格の持ち主のように見える。それとも、わたしの見えないところで、悪いことをしているだろうか。
もう一つ気になっていることがあって、それは鶏の卵を4個回収して、その辺のカゴに置いたまま別の作業をしていたとき、家に戻ろうと思って卵を見たら、1個減っていたということがあった。誰が取ったのか、分からないままなので気にかかっている。

タローに猫は懐いている

ジローも猫に懐かれている

庭には鶏が自由に歩き回り、何羽かの鶏は卵を温め、犬も猫も好き勝手にしている。犬と猫はなかよくしているし、犬が鶏や卵を襲うこともない(ように見える)。猫は鶏を追いかけているが、おそらくそれはじゃれているだけだろう。鶏はキィキィ言いながら、バタバタと飛び上がって交わしている。そんな日常の景色を眺めているときが、穏やかで平和を感じる。しかし、わたしの知らないところで、恐ろしいことも起こっているのかもしれない。

卵を温めている鶏。なぜか2羽がくっついて共同で温めている

スイカを突いているのが雛。だいぶ大きくなった(左はコッコ)

自分の庭で起こっていることはだいたい把握しているつもりでも、思わぬところから卵がごそっと出てきたり、草むらの中でトマトが育っていたり、誰かが鶏の卵を盗んでいたりする。おそらく、わたしが分かっているつもりでいることは、実際の世界のほんの一部でしかないのだろう。小さな虫から犬猫まで、あらゆる動物や植物がそれぞれに生きようとしているのだ。

ハリネズミ騒動

昨夜は犬のジローがやたらに吠えて、その声で夜中に目が覚めてしまった。庭にはバグティとタローもいるはずなのに、ジローばかりが吠え続けている。今日はタロー・ジローを繋いでいないのに、うるさいなあ! と思いつつ、完全に目が覚めてしまったので、寝ている二階の寝室から降りて外に出てみた。寝苦しい夏の夜も、外に出れば清々しい風が吹いているものだ。空にはたくさんの星も光っていた、午前2時半。
ジローは、塀の近くの地面に近づきながら吠えていて、タローも一緒に地面に注目していた。ゴミ箱の臭いに反応しているのか、または地面になにか臭いものが埋まっているのか? と思いながらしばらく見ていたが、猫たちも寄ってきているのでヘビでもいるのかもしれないと思った。
懐中電灯を当ててみると、なんとそれはハリネズミだった。生きているのを見たのは、人生で3度目だと思う。今回は移動していなかったので、その姿をはっきり見ることができた。多くの動物に囲まれて恐ろしかったのだろう、全身に針を立ててうずくまっている。家の敷地の外に出そうとシャベルですくうと、体をまるめて一つのボールになった。その前は、針山から顔と手が出ていて、絵本で見るハリネズミそのものだった。とてもかわいいネズミで、彼もこの庭に一緒に住めたら楽しいね、と思った。
しかしこの調子では犬猫と折り合わないので、塀の外に出して、十メートルくらい先まで追っていった。追いかける犬も制したし、これでハリネズミはどこかへ行ってくれるだろうと思い、二階に戻ったら、しばらくしてまたジローが吠え始めた。まさかと思って外に出ると、さっきのハリネズミがまた別の場所で犬に捉えられていた。ヒッジホグ・リターンズ!

まるまったハリネズミ。目を凝らすと黒い鼻が見えます

シャベルですくって、今度は家から離れた水路まで持っていった。水路の手前で下ろすと、ハリネズミは犬に追われて水の方に降りて行った。一件落着。
ハリネズミは、その針山ゆえに犬や猫に噛まれることがない。だからうちの庭でもじっとしていられたのだろう。ところがハリルが言うには、彼が鶏の卵を食べた犯人だろうとのこと。底の空いたドラム缶の中で卵を温めている鶏がいて、最初は14個あったのが、昨日はなんと7個まで減っていたのだ。鶏は、温めている途中で不良の卵を自分で壊す習性があるものの、その数が異常に多いので不思議に思っていたところだ。あのかわいいハリネズミが食べていたのだとしたら!
うるさくて敵わないと思っていたジローくん、いい働きをしてくれた。



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プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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