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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   
カテゴリー「日常」の記事一覧

エビ

エビの季節がやってきた。季節といっても、エビは養殖なので、太って食べ頃になったということだ。

初日は刺身で食べました

一度に2~3キロ買ってきて、100尾くらいを一気に処理する。頭を取って、殻をむいて、背ワタを取る。もちろん、脇にわさびを溶いた醤油皿を置いておき、ちょっとつけては「パク」。これがたまらない。このときばかりは、日本酒が必要だ(ハラム)。
頭でスープを取ってチェクディルマも作ったけれど、やはり刺身が一番おいしい。加熱する場合は、最後にほんのちょっとにしないと、せっかくの風味が減ってしまう気がする。地元の人は、ほとんどケバブ(グリル)にして食べているようだ。
エビの養殖は数年前に始まったばかりなので、クミシュテペの人にとってエビは未知の食べものだと思う。今のところ頭は捨てられているので、殻と一緒にハリルが市場からもらってくるようになった。鶏肉の骨や皮とは違い、エビの殻はタダなのでうれしい。


エビは、頭からものすごく美味なスープが取れる。犬や猫は、エビの頭をやるとそのままガリガリ食べるけれど、殻も残さず食べてもらうためにひと手間かけることにした。エビの頭と殻を煮て柔らかくし、それをフードプロセッサーで粉状にし、スープに戻し、パンととも混ぜるのだ。これだけのエビをすべて粉にするのは本当に手間だが、そうすると鶏にもやることができるので、今のところやっている。エビも1~2ヶ月のあいだに終わってしまうので、少しの辛抱か。

エビ待ち

エビ待ち

鶏に占領される餌場

猫より鶏が強い

それはバグティの餌入れです


鶏の餌場は牛小屋なのだが、犬猫の餌を横取りしにくる鶏が増えている。犬は鶏より強いが、猫は引いている。コッコは猫を突いていじめているが、今日はチーちゃんにパンチをくらっているところを目撃した。

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虫の話(スムスム)

気温が上がる5月くらいから、家の中にはいろいろな虫が発生する。まずはノミ、ハエが出てくる。布団にダニも感じるようになる。でもダニは、布団を日干しにして、掃除機で吸い取れば解決だ。ハエは、プラスチックのハエ叩きでこまめに叩く。そして部屋の隅に薬をまいて、猫を家に入れないようにしてノミがいなくなる頃、今度は蚊が出てくる。しかし蚊は、ハエと同様、虫の中でも一番どうでもいい種類だ。叩けばすぐに殺すことができるし、飛ぶ速度も遅いので捕まえやすい。
最悪なのが、スムスムという虫だ。蚊のように皮膚を刺すのだが、刺されるときにチクッと痛みを感じる。刺されたあとは、もちろん痒くなる。ただし一番ストレスを感じるのは、その虫が捕まえにくいということだ。スムスムは、物の表面を這うように飛んでいる。蚊のように狙いを定めて叩こうと思っても、逃げ足が速くて大抵捕まらないのだった。
ハリルによると、砂漠で寝ている羊飼いたちも、今年の夏はスムスムが多くて安眠できなかったそうだ。網戸もすり抜けて部屋に入ってくるとか。見かけは蚊よりもか細い感じで、黄土色というか、砂漠の砂のような色をしている。羽にまるみがあるので、上から見るとハートのような形をしている。潰すと、ほとんど質量がないような感じなのに、刺すときのあの鋭い口はどういうことなんだろうか。9月後半に入っても、スムスムはまだ飛んでいる。「蚊がいなくなるスプレー」というのがあるそうなので、来年の夏は日本から持ってこようと思う。
ヒトを刺すのはノミ、ダニ、蚊、スムスムだが、どれもシャワーのあとに患部に塩をふり、水をかけてジョリジョリとこすることで簡単に解決できるようになった。虫刺されのどの薬よりも、塩が一番治りが早いし、痒みを押さえる効果も抜群だ。干し草アレルギーや、ときどき出る発疹も、塩水で十分治すことができる。

オリーブ

庭にはオリーブの木が15~16本ある。すべて4年くらい前に植えたものだ。




そのうちの1本から、初めて実を収穫することができた。といっても、たったの13粒だったが。



小さいサーリジャ(大きいのもいる)

きみどり色の実が膨らんできて、毎日たのしみに見ていたら、少しずつ紫がかってきて、熟してきているのが分かった。今朝、ふと気になって調べてみたら、塩漬けにする場合は緑色のときに収穫すると書いてあるではないか! 急いですべての実を採って、塩漬けにすることにした。
しかしそんな日に限って、朝からガスが止まっている。塩水を作るのに、水道水を沸かしたかったのだが、おそらく夕方までガスは来ないだろう。今年の夏、初めて「断ガス」の日を経験した。噂によるとガス管を掃除したのだとか。あれからあまり時間が経っていないので、また掃除ということもないだろう。仕方がないので、小鍋にアロマ用のティーライトをあてて試してみたが、できるはずもない。結局は沸かして冷ましてあった冷蔵庫の水に塩を入れて、オリーブを浸した。


これを冷蔵庫に保管して、たまに水を取り替えればいいようだ。できあがるのは来年になりそうだ。ときどき味見をするにも13個しかないので、じっくり待つのがいいだろう。

パンを買いに

朝、めずらしくパンを買いに出かけた。普段はハリルに買ってきてもらうのだが、最後に道を歩いたのはいつだか思い出せないほどになったので、意を決して行ってきた。わたしはもともと出不精だが、最近のチーニ事情により、それがひどくなっている。
近所の家並みは貧しい村といった感じだと思っていたが、じっくり見ると、それなりに豊かな面にも気がついた。道路も排水溝も大体整備されている。排水溝に蓋はないけれど、溝さらいとして雇われている人もいるし、ゴミの回収も週2回ある。ゴミの行方はともかくとして、自宅付近にゴミの山があるという不潔な状況が起こることはない。
個人差はあるものの、家も塀や庭などもだいぶ整備されている。小さな路地に入ると、高い塀がある場合は稀なので、その庭もよく見える。多くの家には果樹が植えられて、今の季節、桃や梨などがたわわに実っている。貧しい感じの建物の外見と、果物の重みで垂れ下がっている樹々との対比がおもしろい。
塀と排水溝のあいだの1メートルくらいにもちんとタイルを敷いている家や、鉄で作ったゴミ置き場がある家もあった。蓋のついたカゴのようなものを鉄でこしらえて、四足をつけて、コンクリートの地面に固定する。ゴミのにおいも滞らないし、犬、猫、ネズミ、鳥などあらゆる動物がゴミを荒らすのを防ぐことができる。大体の家はゴミ袋を塀の上に置くか、レンガの塀の隙間に棒を突っ込んでそこにゴミ袋をかけるようにしているが、洗練された道具を自作する人もいるようだ。
路地にはタラゴンがたくさん自生している。密生しているそばを通るとぷうんと香って、清々しい。その他の草も生えているが、大概は散歩している羊に食べられて、草刈りをしたあとのような状態になっている。
クミシュテペは漁師の町だ。夏の強い日差しに加え、カスピ海からの風と湿気によって植物が育つことが、この町の豊かさを支えているのだろう。しかし町には産業があるわけではないので、漁師でない人は家畜を飼ったり(トルクメンはもともと遊牧民)、土方をしたりして収入を得る。それから、国からもらう生活手当のようなお金をあてにしている人がほとんどだそうだ。貧しいけれど、まだ切羽詰まってはいないのかもしれない。
貧しさを象徴するのもがあるとしたら、それは家につけられている鉄格子だ。窓と扉を鉄で厳重に覆っている家が非常に多い。泥棒はいるらしいのだが、多くの家は大家族なので誰かしら家の中にいるだろうに、それに大して高価なものは持っていないだろうに、と思うのだが、そうなっている。実際はみんな、家に金塊を貯めこんでいたりして。うちは今でも鍵をかけないことがほとんどだが、泥棒に入られるまではこのままだろうと思う。自ら進んで鉄格子の中には入ろうと思わない。

今朝の収穫パン4個。1枚16円くらい

一日中、焼きたてパンが食べられるのは、イランの豊かさのひとつだ。

今年の夏は、毎日欠かさず庭仕事をした。そのわりに成果はないのだが、やってみたことで分かったことはあった。来年は、本格的な鶏園にするために、鶏が食べそうな草を積極的に生やし(自生している草に水をやる)、そうでない草は早めに抜いてしまおうと思う。しかし砂漠では、生える植物が毎年変わるので、来年がどうなるかは予想がつかない。きれいな野草がたくさん生える年もあれば、数えるほどの種類の草が一面を覆って終わりの年もある。今年は、なぜかうちの庭に菜の花が満開だった。

5月の庭の様子

こんな景色は初めてだったのだ。これは鶏にもいいので、来年も生えてほしいと思い、少し種を取っておいた。


勝手に生えてくるトマトは、あまり構わないようにして、地べたを這って育ってくれたらと思う。

わたしの花壇で砂浴びをする雄鶏(やめて)

わたしの花壇でくつろぐキティ(やめて)。綿花です

綿花は上手にケアすれば、鶏が食べないことが分かった。一羽が葉をつまむと他もみな真似してしまうので、背丈が伸びるまではカゴを伏せて保護するとよさそうだ。しかしこの綿花の種は収穫できるか分からないので、来年はないかもしれない。

放し飼いにした雛も大きくなっている

この鶏の後ろに生えているのが、クミシュテペのブルーベリーだ。これも今年初めて自生したので驚いている。ハリルがこどもの頃は、これを採って食べたとか。放し飼いの鶏にはほとんど餌をやっていないので、彼らはこういうものをつまんで生きている。
ところで今日、ハリルは帰ってくるなりプレゼントがあると言った。そんなものあるわけないよと思いながらも、期待に胸がドキドキしてきた。背中に隠しているので早く早くとせがむと、こんなものだった。




鉄でできたスコップ。そういえば水曜市場で買ってきてもらうようリストに書いたのだった。鉄職人に特別に作ってもらったそうだ。色も発注したとか。今使っているスコップは外側に反ってしまって困っていたのだが、これなら頑丈なので何年も使えるだろう。スコップの初仕事は、庭中に落ちている犬の糞をすくって片付けることだったけど。

市場

今週は煮込みを作ってほしいと、ハリルがサブジを買ってきた。

スフラの上でひもを解いて、汚れた部分や不要な部分を除く

きれいにした状態で、水洗いをする

ところがコリアンダーもタラゴンも、まったく香りがしないどころか、なんだか変なにおいがした。ハリルに訴えると、そういえばこれはテヘランから来たサブジだと売り手が言っていたそうだ。なぜテヘラン近郊で育ったサブジがクミシュテペで売られているかというと、安いからだそうだ。逆に、地方で育った香り高いサブジはテヘランで売られるのだそうだ。真偽のほどは分からないが、これなら買う意味がないくらいのサブジだった。タラゴンは捨てて、ゴルメサブジにするコリアンダー、イタリアンパセリ、ディル、チャイブは一応炒めておいた。


今週もトマトはひとカゴ買ってきた。これは、二人で二週間くらいで食べきる。ラタトゥイユとトマトソースを鍋いっぱいに作ったあとでも、冷蔵庫に入りきらなかった。



トマト専用の引き出し


ハリルはバイクで買物に行くのだが、大きなメロンを7個とトマト十数キロ、そのほかにも果物や野菜をたくさん持って帰ってきた。一体どうやって積んでいるのだろう? ときどき、割れたスイカやメロンを持って帰ってくるので、途中で転ぶこともあるのだろう。そういうときは、とても悔しそうにしている(果物を失ったことを)。

自然という世界

先日、放し飼いにしていた雛(小さな鶏)が、一羽だけいなくなった。朝に晩に鶏の数を数えているのだが、ある朝、一羽足りないことに気がついたのだった。いなくなった理由については決め手となる手がかりもなく、がっかりして諦めている。
一番高い可能性としては、タローかジローが食べたということだ。断然、タローが怪しい。別の朝早く、鶏の異常な鳴き声がしたのでハリルが窓の外を見ると、タローが雛を追っていたそうだ。タローは特におとなしい性質の犬だが、ときどき鶏がたむろしている牛小屋の方に一人で向かうので、以前から観察していた。けれど、日向ぼっこをしたり、日陰を楽しんだりしている様子しか見たことがないし、これまで鶏の数は減っていなかった。あのおとなしそうな瞳の奥には、じつは悪いやつが潜んでいるんじゃないかと何度も疑ってみたけれど、やはりタローはバグティのような穏やかな性格の持ち主のように見える。それとも、わたしの見えないところで、悪いことをしているだろうか。
もう一つ気になっていることがあって、それは鶏の卵を4個回収して、その辺のカゴに置いたまま別の作業をしていたとき、家に戻ろうと思って卵を見たら、1個減っていたということがあった。誰が取ったのか、分からないままなので気にかかっている。

タローに猫は懐いている

ジローも猫に懐かれている

庭には鶏が自由に歩き回り、何羽かの鶏は卵を温め、犬も猫も好き勝手にしている。犬と猫はなかよくしているし、犬が鶏や卵を襲うこともない(ように見える)。猫は鶏を追いかけているが、おそらくそれはじゃれているだけだろう。鶏はキィキィ言いながら、バタバタと飛び上がって交わしている。そんな日常の景色を眺めているときが、穏やかで平和を感じる。しかし、わたしの知らないところで、恐ろしいことも起こっているのかもしれない。

卵を温めている鶏。なぜか2羽がくっついて共同で温めている

スイカを突いているのが雛。だいぶ大きくなった(左はコッコ)

自分の庭で起こっていることはだいたい把握しているつもりでも、思わぬところから卵がごそっと出てきたり、草むらの中でトマトが育っていたり、誰かが鶏の卵を盗んでいたりする。おそらく、わたしが分かっているつもりでいることは、実際の世界のほんの一部でしかないのだろう。小さな虫から犬猫まで、あらゆる動物や植物がそれぞれに生きようとしているのだ。

プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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