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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   
カテゴリー「住まい」の記事一覧

台所のレンガ壁

いよいよ台所のガス台の前の壁に着手するときがきた。今回の工事における、わたしの中のハイライトである。
イランの台所は十中八九、セラミック(タイル)で壁が覆われている。表面がつるつるで見栄えはするのだが、実際に料理を始めると、冬場は温度差により水滴がつき、それが滴り落ちてきて床が濡れてしまう。そしてこまめに拭き取らないと、カビが生える。また油を大量に使う料理が多いので、料理の際にそれが壁一面に飛び移り、べたべたになりやすい。そのためトルクメンの女性たちは、油を使うときはなんと外の小さなガスコンロで料理しているのだ。見栄えがいいこと以外は、セラミックの壁はメリットがないとわたしは思っている。
そこで、台所は広範囲にレンガの壁にしたかったのだが、結局は妥協して油の飛びやすいガス台の前だけになった。その他の壁は、タイルを貼らずに白いモルタルにしようと思っている。もちろん、職人たちはそんな台所を作ったことも見たこともない。


レンガ職人H

レンガを積んでくれるのは、Hという職人だ。彼は家を造っている職人Kの弟である。以前にKの助手をしていた人も彼らの兄弟Jだが、Jは電気工でもあるので今は別のところで仕事をしているそうだ。Kは長男でまじめな性格なのに対して、Hは陽気でひょうきんな性格だ。

把手が二つついた専用の道具でレンガを抑え、そこにセメントを流し込んでならしていく。


ここまでは順調にいった

途中、右端のレンガの配置が怪しくなってきた。列の最後の小さなピースをトンカチで叩いて作っているのだが、それが雑なのでちょっと見栄えが悪い。汚れたレンガもはめ込んでしまっている。でもHは楽しそうに作業を進めていく。そこへKがやってきて、「美しく配置しろって言ったじゃないか!」と怒りながら、レンガのピースを持っていって機械でまっすぐに切断し始めた。おかげで最後の数段はきれいに仕上がり、わたしもほっとしている。そのあいだHはニコニコしながら「Kは神経質だなあ」とでも言いそうな顔でこっちを見ていた。ははは


職人K


職人H

職人Hが作業したのに、Kが完成写真を横取りしたので、すかさずもう一枚撮ってくれという。棒で隠れている部分がちょっとがたがたしているのだが、Hの楽しそうな手作業を見ていたので、それを見るたびにわたしは思い出すだろう。
このあとレンガの目地に白いモルタルを入れる予定だそうだ。またレンガ壁の上部の四角は切り取って、換気扇が入ることになっている。換気扇を覆うカバーが売っていないので、それをどうするかが今後の大きな課題だ。


外から見た台所(右側)

家に向かって左側はシャワー室になるのだが、予定していた窓はやめて、そこにも台所と同じように換気扇を入れることにした。シャワー室に換気扇がついている家は、このあたりにはないようだ。

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職人との疎通(なし)

地上階は一段と家らしくなってきた。工事の内容は、順調に進んでいることとあいかわらずのことがあるけれど、わたし自身はいろいろと分かってきたことがある。

大きな気づきは、「職人は、住み手が望むとおりの家を造ろうと思って仕事をしている」わけではないということだ。彼らは仕事として家の建設をしているわけで、そのための技術を持っている。だから家主がどうしたいかとか、どうすべきだという意見は最優先しなくても、十分家は建つのだ。おそらく「施工主」という概念を、彼らは持っていないだろう。
今日はサロンと台所を仕切るドアの設置で、一幕あった。サッシ店には、サロン側にドアが開くよう作るように頼んであった。わたしが店主の目の前で開くべき方向を指し示して、彼も「了解」と言ったのだ。ところがドアが納品され、設置の段階になって、設置を担当する(家を造っている)職人が「ドアは台所側に開く」と言う。しかも右開きで冷蔵庫のドアと接触する配置なので、それはあり得ないとわたしは反対した。左に開くなら、台所の内側に開くよう妥協してもいいけれど、四方向のうち絶対にだめなのが右側への内開きだ。わたしはサッシ店とのやりとりを説明し、彼がちゃんと造らなかったのだから、新しく作り直すか、ネジを付け替えて左開きにするしかないと言った。その後、ハリルがサッシ店主を連れてきてくれたので状況を説明すると、彼はなんと「ドアはサロン側に開く」と言う。つまり、指示どおり作ってあったのだ。
結局は、職人が「スタンダード」どおり、台所の内側にドアが開くよう設置しようとしていただけだった。よく考えたら、ドア枠を180℃回転させて設置すれば、サロン側に開くわけだが、これまで似たようなミスが続いたので、わたしもうっかりそれには思い至らなかった。サッシ店主とハリルと職人とでやりとりした結果、ついに職人は「反対に設置すると自分がまちがえたと思われる」と、以前にも玄関や寝室のドア設置の際に言っていたことを繰り返した。みんなは "Forget it!" というようなことを言っていたけれど、それを聞いてわたしは上に書いたようなことを理解したのだった。
職人は、家主がどうしたいかよりも、自分がどうすべきかを依然として優先させているわけで、色々と激しいやりとりがあったからといって、こちらの意見を理解してくれていたわけではないのだ。今後も細かくチェックしないと、自分のプランどおりに造ってもらえるとは限らないだろう。ちなみに、寝室のドアは外開きを強制したけれど、玄関はわたしが折れて内開きにした。職人に限らず、スタンダードの違うトルクメン全員にいちいち説明する手間を考えたら、掃除のときの不便(たたきからごみを直接外に掃き出せない)はたいしたことないと思ったのだ。それよりなにより、そうしておけば「自分の思いどおりにならない」と感じるストレスを受けなくて済む。これは非常にわたしらしくない態度なのだが、さすがに年の効なのか、できるようになった。
念のため書いておくと、家を造ってくれている職人は、人柄はいいのだ。以前にうちがウズラを飼っていたとき、小屋から脱走したのがいて、1ブロック先に住んでいる彼の家の庭に舞い降りた。彼が2羽を抱えて持ってきて、うちの家禽小屋に返してくれたので分かったことだ。ここの法律によれば、自分の庭に入ってきた家禽は食べてもいいそうだ。それなのに、うちのウズラだと考えて律儀に返しに来てくれたので、まじめな人だと思ったのを覚えている。
けれど、彼が職人としてしようとしている仕事と、わたしの計画が違うので、頻繁に齟齬がある。おまけに彼が理論派ではないので、話しあいで解決しようとしても必ずうまくいかないのだった。


上部と下部で太さの違う柱を調整する職人


まるで楽器を弾くようにセメントを叩きつけている。力強いのにしなやか


柱の根元も壁と同じように石材を貼る


中身(接合剤)はコンクリート

 

窓の問題

今日はついに窓枠と玄関のドア枠が設置された。ガラスはまだ入らないが、他の作業が終わったらはめ込めばいいだけになっている。


庭に面した窓(サロン)


隣の家に面した窓(サロン)


サロン全体


家の外から見たサロンの窓

二つの寝室にある窓枠もそれぞれ固定され、床もすべての部屋にコンクリートが均されたので、次は床に吸湿だか断湿だかのシートを敷くようだ。それが終わったら、壁の床から約20cmのところにセラミックを貼る。日本では木材であるこの部分は、イランでは石やセラミックが用いられている。職人二人に助手一人で作業しているので、今回は進み具合も早いようだ。


壁の下部に貼られるセラミック


台所の天板に使う石

ところがここに来て、大きな問題が勃発した。家の南側に面するお隣さんが、サロンの二つの窓を設置するなと言うのである。設置したら、破壊するそうだ。じつは以前にもお隣さんからはそういう苦情があって、そのときはなんとか収まったと思っていたところ、今日になってコミュニティから書状が届いたのだった。書状の内容は、48時間以内に窓を撤去しろというもの。ハリルが急いでコミュニティに状況を確認に行くと、長がいなかったために、その期限を二日延ばしてくれたとのことだった。
そもそものまちがいは、隣との境界線ぎりぎりにうちの家の壁が建っていることだ。イスラム法によれば、建物は境界線から1メートル以上入ったところに建てなければならないらしい。境界線ぎりぎりに建てて、隣から苦情がある場合、窓は設置してはいけないそうなので、それによればうちがまちがっていることになる。窓は撤去しなければならないだろう。ここでは、日本や欧米の法律を基準にして考えても意味がないのだ。ただ問題は、お隣さんが単に嫌がらせのためにこういった行動を起こしている可能性が高いということだ。
このお隣さんは、うち以外ともいくつもトラブルを起こしてきている。土地を所有しているのはこどものいる夫婦とその夫の父親なのだが、彼ら自身も過去に仲たがいしたそうで、中央に壁を建てて土地を二分して使うようになった。夫婦はうち側の土地に家を建てて住み、牛と羊と鶏を飼って暮らしている。父親はそこに置いている家畜の世話のためだけに自宅から毎日通って来ている。けれど、窓の件でうちを訴えることにかけては、一致団結しているようだ。お隣さんに面した南側の外壁も、外装工事を「させてくれない」ことで以前に方がついている。
うちの地上階は倉庫だったこともあって、南側の窓は天井につくほど高いところにある。つまり、この窓から隣を覗こうと思ったら、椅子かなにかの踏み台に登らないといけない。そこまでして見るものは隣にはないし、ひとつの窓は、外は彼らの建物の裏側の屋根部分にあたっている。それ以前に、隣の家を窓から覗くなど、自分がされて嫌なことをお隣さんにする気はないよ! だから、うちからしてみれば、お隣さんが「隣が窓からうちを覗いている」というのは言いがかりだ。勘弁してほしい。
せっかくつけた窓枠を外してレンガを埋めることになってしまうのか。どうにかしてそれは回避したいけれど、最悪の場合ありうることだと覚悟している。ただし、その際はおとなしく言いなりになると思ったら大まちがいだ。そっちも十分覚悟しておくことだな。ヒッヒッヒ
書き忘れていたけれど、そのお隣さんはうちの親戚でもある。父親は、ハリルの妹の義父なのだった。

工事再開

家の工事は三週間以上、中断していた。天気が荒れて仕事に適さなかったのと、兄弟である職人たちが彼らの親戚の畑で仕事をしていたので、休みが長引いてしまったのだ。
以前は職人と助手のふたりが仕事をしていたのだが、助手が入れ替わり、また工事を早く進めるために職人がひとり増えた。どうやら新しい職人も兄弟のようだ。

今日は家の半分にあたる面積の床に、コンクリートが流された。床が均されると、ようやく部屋としてイメージできるようになってきた。せっかくきれいに流し込んであるのに、よく見たらさっそく足跡がついている。

誰だ? 猫だ。職人に尋ねたら、猫は縛りつけておくしかないな、と言っていた。でもこの上にまた一層、重ねるそうなので問題ないのだとか。わたしはその一層にも足跡がつくと思っているのだが、それが猫のものなら仕方ない。しかし子牛だとまずいので、入口をしっかり塞いでおいた。
工事が中断する前に、寝室のドア枠の固定と階段もできあがっていた。これは寝室から外にあるトイレに近道で行けるよう、ハリルが希望したドアだ。職人の大いなる反対を押し切って(わたしの希望で)、外開きになるようつけてもらった。

この階段は職人のデザインだが、ステップがゆとりをもって配置されたので気に入っている。ここは二階に上がる階段の下にあたる場所だ。上の階段が屋根になっているので、それをうまく利用して猫ハウスを設置したいと思っている。


家の中よりも外が好きなタイちゃん

もうすぐ出産するタイちゃんは、チーちゃんと瓜二つとなった。父親だと思われる黒トラに似ていると思っていたのだが、いまはチーちゃんにそっくりだ。

ドアの問題

ドアと窓がいくつか納品されて、問題が発覚した。これがまたわたしが予想したとおりの結果で、本当にうんざりする。


二階に立てかけてあるのが納品されたドア

問題は、新しく取りつけるドアである。庭に面した玄関と寝室にそれぞれドアをつける予定なのだが、どちらも外側に開くようわたしは計画していた。この家の機能を考えて計画しているのは、わたしなのだ。間取りも電気・ガス・水道の位置も、わたしがいちいちハリルと職人に説明してきた。ところがハリルはその内容を十分に理解しないだけでなく、職人にも的確に指示を出さないので、作業が進むにつれて問題が発覚する。設計者であるわたしが言葉が分からないのが、それ以前の問題だけれども。
どうして設計図を描いて確認しないのかと、これを読んでいる人なら思うだろう。柱が大体3メートルおきに建っている台形の家の寸法を測り、設計図を書き起こすことはもうとうの昔からわたしがやっている。地上階の計画は、10cm単位で細かく描いて壁に貼ってある。でも設計図という二次元の紙から、三次元の工事現場へ脳の中で情報を変換する作業は、ある種の訓練をした人でないとできないのである。職人たちの中には、設計図を見てもそれを読めない人がほとんどだ。最初はそのことに気づかず、どうして図を読もうともしないのか不思議だったが、彼らは見てもなんとなくしか理解していないのである。だから現場をいちいちチェックしなければならないのだが、やりすぎると仕事の邪魔になるだろうし、作業の手順もそのときどきで決めるようなので、わたしもいちいちその場にいられない。それでもこっそり見張っていた中、見逃したところにドアの問題が起こったのだった。
イランの標準的なドアは、すべて家の内側に開くそうだ。しかしうちの玄関には三和土(たたき)を作ってある。そこに薪を置いたり靴を置いたりするわけだから、開けるたびにドアが入ってきては困るのだ。ドアは外に開く必要がある。寝室も、将来ベッドを置いた場合、ベッドにつかえてドアが半分しか開かなくなってしまうので、これも外側に開く必要がある。設計した時から言い続けているというのに、ハリルはそれを無視してか忘れてか、内開きのドアを発注していた。納品された後に業者と話をするしかなかったのだが、結局、内と外を逆にして設置することになった。ドアの内面と外面では作りが少し違うし、右開きと左開きの違いも出てしまうのだが、内開きか外開きかの違いに比べたらたいしたことはないので、そのまま逆につけようと思う。雨が多少入って来ようとも、玄関の内開きは困る。
ところが今度は職人が内開きに設置しようと、寝室のドアの枠を固定し始めた。セメントで固める前に気づいたわたしはまた抗議したのだが、職人にとって内外を逆に設置することは考えられないらしく、譲らない。わたしのトルクメン語ではとても説得できないので、ハリルを呼んで「問答無用。とにかく外開きに設置して!」と言ってもらった。ハリルはそう言ったものの、呆れたようなめんどくさいような態度を取っていたので、これがまた頭にくるじゃないか。


仮止め(?)された寝室の窓

トルクメンの家は、持ち主が死んでしまっても、その人に敬意を払い、建物を取り壊したりしない。百年以上の古い家も、クミシュテペにはまだいくつも建っている。廃屋のようにボロボロの家にも人が住んでいて驚くことがあるのだ。そういうことなので、この家も今後百年以上、ずっと残ることだろう。だからこそ、使い勝手のいい家にしたいのだが、そのわりには建て方がいい加減だ。


庭に面したサロンの窓

サロンの窓も二つ、位置が固定された。このあとセメントでしっかり固定するのだろうけれど、今のところ水準器を使った様子はない。水平を測らないのだろうか。それくらいは別にかまわないけれど(窓だけ水平を取ったところで意味がない)。

家の工事

家の工事はゆっくりと、でも確実に進んでいる。

西側には台所とシャワー室があり、そのあいだに幅1メートルの通路がある。シャワー室の外側にできた高さの低い壁は、給湯器を雨や風から守るためのものだ。


ここに給湯器を置く

ガス給湯器は、原則として屋外に設置するのだそうだ。うちの二階は手洗い室に置いてあるのだが、それは事故で中毒死する可能性が高いので危ないらしい。それなのにどうして屋内に設置したのかは、わたしには分からない。今のところ事故は起きていないが、ガス漏れがするくらい給湯器の品質が悪いということなのだろう。部屋に置いているガスストーブでも、事故死するケースがあるらしい。
さて、台所側には勝手口に上がるための階段もできた。基本的にはわたししか出入りしないはずだが、立派な階段をつけてくれた。できたてほやほやなのに、なぜか古く見える。


猫たちが屯する場所になるだろう

北側の壁は、上方にあった穴が4つとも塞がれ、セメントできれいに均された。次は、2枚の扉と2枚の窓を入れる作業が始まる。窓と扉が納品されたのだが、ここでまた問題発生。まったく頭の痛い内容だ。それはもう次の記事へ先送りしよう。

シャワー室

家の地上階の工事は、とうとう最後の小部屋であるシャワー室の壁に着手した。台所とシャワー室のあいだには1メートルくらいの通路があって、そのつきあたりに洗面台を置くつもりだ。洗面台はサロンと繋がっているので、お客さんも小部屋に入らずに自由に使うことができる。


左の黄色い壁がシャワー室(と通路)

洗面台の正面には窓がついて、そこから光と風を取り入れる予定である。


サロンから見たシャワー室(右)と台所(左)

よくぞここまで、順調にこつこつと仕事をしてくれたと思う。過去二年のあいだ、勤務態度がひどい職人ばかり見てきたので信じられない思いだ。よく考えたら完成まで半分以上仕事は残っているものの、壁と配線ができればあとは表面の処理だけなので、完成図が見えやすくなるだろう。


シャワー室の壁

上は迷宮への入口。ではなくて、玄関になる予定の場所だ。ここを入って、右手にシャワー室がある。玄関の鉄扉はもちろん取り払い、おそらく典型的なアルミのドアがつくだろう。この鉄の扉が開いたのを見たのは、イランに来てから初めてだ。この状態から、扉とその鉄枠をどうやって取り除くのかは、未だに想像がつかない。おそらく周りのブロックがいくつか壊されるのだろうけれど。


工事用の砂利を防風壁にするジャポンとガチガチ

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プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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