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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

ものや秩序に対する態度

鶏卵」の記事に対して、ハリルは「コメントがたくさんある! みんな黄身の色がいいってコメントしているのか?」と言った。「いやいや、卵を盗んだ犯人について盛り上がってるんだよ」と返したら、「日本はものがなくなることに対して、ずいぶん関心があるんだな」と言っていた。トルクメンにとっては、なくなったものはなくなったもの。いつまでもこだわらないのだそうだ。本当かいな。
ここではものがなくなること、壊れること、動物や人が死ぬことについてすら日常茶飯事なので、案外そういう態度はあるのかもしれない。そう言われれば、これまでに見た失ったものやことに対する人々の反応も、あっさりしていたように思えてくる。あるとき、ナーセルの散髪をハリルがしたことがあった。ハリルはなにを思ったのか、ナーセルの耳のまわりをバリカンで短く刈り、その他の部分は比較的長いという、つまりツーブロック的なスタイルに切ってしまった。ナーセルは髪の毛が多いので、うまく刈れば格好良くなったであろうそのスタイルは、どう見ても失敗の体をなしていた。みんなが青ざめている中、鏡を見たナーセルは、瞬間的に両手で頭を抱えて、ちょっと走り出した。でもその後すぐに気を取り直して、頭を撫でたのだったか、何事もなかったかのように散髪を終えたのだった。もちろんハリルがその場で「男なら髪型にこだわるな!」とかなんとか言ったからなのだが、失敗した髪型をなんとかしようとせず、ずいぶん男らしいなと感心したのでよく覚えている。それからこどもたちも、自分の持ち物が壊れてしまっても、泣いたりせずにケロッとしているのを何度も見たことがある。笑っているときさえあるのだ。ズボンの膝や靴下に穴が開けば、「じゃがいも!」と言って、膝小僧やかかとを見せて楽しんでいるし。それに対してわたしは自分の持ち物が壊れてしまったときは「取返しのつかないことが起こってしまった…」と感じて大きなストレスを受けている。ものが手に入りにくいイランに来てからは、特にそうだった(最近は、意識してその態度を改めるようにしている)。なにか失敗をしたときも、そう感じやすい。自分自身が日本人の典型だとは言わないけれど、いろいろな意味で、トルクメンに比べて日本人はものにこだわりがあるということはあるような気がする。それから、秩序が乱れることに敏感なのもそうだと思う。型にはめるのが好きというか、予定調和が心地いいというか、物事を遂行する上で計画や手順をとても大事にする。場当たり的な仕事を標準とするトルクメンを観察していると、日本人のそういう傾向がぼわんと浮かんで見えてくる。
そんなわけで、ハリルにとっては卵を盗んだ犯人や、毎日何個盗まれているかはとくに重要ではなく、朝、卵をいかにおいしく食べるかがすべてのようだ。そうは言いつつも、卵は毎日しっかり集めて保管している。鶏は卵を産むと「コッコッコッコッコッコケーッ! コッコッコッコッコケーッ! コッコッコッコッ」と派手な雄叫びをあげるので、しばらくしたら回収に行くのである。



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う~ん・・・

  • by あん
  • 2015/09/17(Thu)04:16
  • Edit
読んでいて、私もKumikoさんの考え方や感じ方と同じで、何事をするにもまづは手順を考えて最高のものを得ようとします。それで想定外が起きるとガクッと来ますよ。そして物が盗まれるのや壊されるのは一等嫌ですね、怒り心頭します。(笑)でも同じ日本人で長年同じものを食って同じ様に生活しているダンナは正反対で、壊れれば気長に直してみて、もし直せなかったら諦める。盗まれたら別に気落ちもせず、返って来ないなら自分で又調達する…てな感じです。O型だからかなぁ~。(爆)私は物に関しては自分のお気に入りとか好みが強いからそうはいかないんですよ。なんとか前の状態に持っていかないと落ち着かない…転んでもただでは起きない性分です、わはは。卵が盗まれた事より、卵をどうやって美味しく食べるかが重要だなんて…ハリルさんなんて素敵な哲学でしょう!うちのダンナはそこまでは素敵じゃなくて、卵もお腹に入れば良い…盗まれても、食わなきゃ良いって感じで…単に諦めが早いだけですねこれ。(笑)

あんさん

  • by 砂漠人
  • 2015/09/18 00:51
またツボに入ってしまいました(笑)。
ご主人はそうなんですか。やっぱり個人差は大きいのかなあ。
じつは今日、犯人を現行犯逮捕しましたよ。
サーリウェズがバリバリ食べていました。その場で叩きましたが、
棒が細すぎたので追いかけていって、卵を見せながら3回頭を叩きました。
覚えるといいんですけど…。

No Title

  • by paprica
  • URL
  • 2015/09/17(Thu)05:00
  • Edit
うははっ。ハリルさんの意見も、砂漠人さんの考察も面白い!
確かに、日本人はものへの執着心は大きいのでしょうね。良く言えば、こだわりであったりするし、自分のものだから大切にしようという気持ちも強いだろうし。それから日本人って「Neat」な人が多い!身の回りがきちんとしているだけでなくて、ものの考え方も順序良くバランスよく当たり障りなく整っているというか。国民性って面白いですよね。

下の卵記事でびっくりしたのは、残す卵と食べる卵があること。「なんでハリルさんは卵を一箇所に隠しているの?」って不思議でした。雛にするものと食べる分とがあるのですねー。とりたての卵、黄身の色も鮮やかできれい!

papricaさん

  • by 砂漠人
  • 2015/09/18 00:51
経済先進国の民に比べて砂漠の民がワイルドっていうだけかもしれませんが、
おおらかさの基準のひとつにこれがあるのかなと思いました。
贈物なんかでも、こだわりますよね。
ここの人はもらうことやあげることが重要で、贈物そのものには
それほどこだわらないように感じます(貧しいだけ?)。
今日は動かない鶏を発見しました。
面倒だったので後回しにしましたが、明日の朝、巣を作ってやろうと思います。

No Title

  • by mizuki
  • 2015/09/17(Thu)07:18
  • Edit
 ハリルさん、黄身の色もとってもいいですよ~(手を振る)。

 この記事、とっても面白かったです!まず、なくなったものに執着しないという話に惹かれ、ツーブロックになったナーセルさんが頭を抱えて走るところで吹きだし(ナーセルさんすみません)、日本人は秩序が乱れることに敏感というところ、ものが手に入りにくいからこそ、壊れたり無くなったりすると大きなストレス、というところに頭をブンブン振って頷きました。で、私もその感覚をできるだけ改めようとしています~。

mizukiさん

  • by 砂漠人
  • 2015/09/18 00:52
"Gone is gone." とハリルは言ったのですが、「へぇ」って。
そういえば、わたしが落ち込んでいるそばで、いつもそう言っていました。
すぐどこかに置き忘れてしまうとか、壊してしまうとか、盗まれるとか、
日本だったら「ものを大事にしなさい」と言われそうですが、ハリルは
そのことで悲しんだり怒ったりしません。
「黄身の色がいい」というコメントを伝えましたが、
5ポイントのうち1ポイントとか言ってました(爆)。

そうそう、自分で失敗しておいて「男なら…」って言うハリル、
おかしすぎて書きながらわたしも笑っていました。

ちょっと追伸

  • by あん
  • 2015/09/17(Thu)19:45
  • Edit
玉子の事でちょっと思い出しました。昔Coop(生協じゃない)で買う高い玉子は友達に「有精卵だから温かい所に置いていると孵るよ」と言われたのを思い出しました。現に割ったら少し雛になりかけていた事があるって言ってましたよ。それを聞いて私は玉子は買ったらすぐにガンガン冷蔵庫で冷やす事にしました、だって想像しただけでもう玉子食べられなくなりそうでしたから。でも思い出すと、母は何時も卵を沢山農家から買って常温でキープしてたんですよ、冷やさない方が美味しいのかしら…。有精卵と無精卵ってどうやってできるんでしょうね、そして素人は買った卵からどうやって見分けるんでしょう…?

あんさん

  • by 砂漠人
  • 2015/09/18 00:57
卵を冷やさなかったのは、冷やさなくてもすぐには腐らないから
じゃないでしょうか。でもあまりに何週間も置いていたら
それは腐りますけど(笑)。
昇さんが書かれたとおり、常温では雛は孵らないでしょうね。
有精卵を見分けるための小さなライトを見たことがあります。
照らすと分かるんでしょうか、試していないので使えるのか分かりませんが。

No Title

  • by 昇
  • URL
  • 2015/09/18(Fri)00:39
  • Edit
それって、多分遊牧民の考え方じゃないでしょうか。
遊牧民は一定の範囲とは言え家畜を追って生活していたので、失った何かを探す為とどまる事はそう出来ない。故に執着しないという感じで。

そう言えば、以前「人間以外の動物は時に子供を見捨てたり殺したりする。これは自分が生きていればまた子供を作れるからだ」と聞いた事が。こう言う極端ではないけど、常に死が近い所にある人間も、死に対しては割とアッサリしている感じがします。

ちなみに遊牧民は農耕民の一部から派生したもので、決して農耕文化より先ではないとか。ふと思い出しました。

あんさん、卵は有精卵で、雛になりかかっている物がある可能性がある場合は、器を別に用意して一個一個割って行きます。で、大丈夫な物とそうでない物を分けています。
たま〜に殆ど雛さんという恐い物があるので、うち(^^;
卵は親鳥の体温近い温度でないとダメなので、普通に常温に保存するくらいなら大丈夫かと。うちは常温保存です。

昇さん

  • by 砂漠人
  • 2015/09/18 01:01
なるほど、遊牧民という、そういうこともありそうですね。
死が近いところにある人間の方が、死に対してあっさりしている
というのもそうなんでしょうね。慣れのようなものでしょうか。
今日、サーリウェズが卵を食べている現場を押さえました。
罰を与えるとき、頭を叩きますか? お尻ですか?
それともどうするんでしょう?

No Title

  • by mariko
  • 2015/09/18(Fri)18:37
  • Edit
卵について一言。
最初の卵が小さいということ。「初卵(ハツタマゴ)」というのだと以前教わりました。栄養的に特別かどうかはわかりませんが、初乳は特別とか、人間も動物も初めてのものは「特別」なものなのかなと思ったことでした。

marikoさん

  • by 砂漠人
  • 2015/09/18 21:30
うちに来た鶏たちは、産み初めだったんでしょうかね。
今ではだいぶ大きくなりました。
小さいものは毎朝食べています。特別だといいなあ!

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プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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