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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

いやみの撃退法

ひさしぶりに水曜市場に行ってきた。市場は朝から店が出ているのに、ハリルのバイクに乗せてもらい到着したのは午後1時。もう多くの店が畳まれたあとだった。いつもだいたいこんな調子だが、四年目ともなるとさすがに慣れてきた。物事が計画どおりに進まないのには、訳があるのだ。これを言葉で説明すると非常に長くなるのだが、要は、予期しない出来事が次から次へと起きるし、それが前提で日常が営まれているので、誰も計画をあてにせず、約束を破られても怒りもしない。計画どおりとか、約束を守るというのは、頭で考えたとおりに物事が運ばれる環境にないとできないことなのだと思う。クミシュテペは、不可抗力の世界である。
布地を選ぶ必要があったので思い切って市場に出かけたのだが、そんな状況だったので、トラックの荷台で布地5枚を選び、必要な手芸用品も運よく見つけ、すぐに用事を済ませることができた。ゆっくり歩いて買物を楽しむなどということは、起こりはしないのだ。それでも天気がよかったのでバイクを降りて、ぶらぶらと見物してから家に帰ろうと、ハリルと別れた。ところが5分もしないうちに、なぜわたしが市場に行くのをやめたのかを思い出したのだった。
クミシュテペには外国人が住んでいないので、わたしの存在は知れ渡っている。知らない人でも、地元のトルクメンとは異なる服装のわたしを見ると興味が湧くようで(顔は同じなのに)、歩くだけで全身に心地よくない視線を感じる。そして勇気を出してその方向を見ようものなら、遠慮のない視線が突き刺さる。今日はなぜサングラスを忘れてきたのだ! 後悔先に立たずだった。それでもわたしは数十メートルの距離を、平静を装い口角を上げ気味にすらして、まっすぐ歩いた。そして市場を後にして家路についたのだが、その5分くらいのあいだに道行く人の反応に何度もいやな思いをした。大概はこどもの悪ふざけなので、真に受けてはいないけれど、その場では一瞬苛立ってしまう。投げられる言葉のうち、圧倒的に多いのは「チーニ」という単語。中国人という意味だ。いったい全体、世界中の人が中国人をバカにしているようなのはどういうわけか。…と書いたわたしも、自分は中国人やトルクメンより上位に位置していると根拠なく思っているわけだから(笑)、まったくあほな話だ。中国人だって、世界のどの民族よりも自分が上に位置していると思っているに違いない。
いやな言葉をかけられたり、訳もなく笑われたりしたときにどう対処すべきか、わたしはハリルから学んでいるが、実践するところまでいっていない。おそらくハリルだったら、「チーニ」と言われたら、即座にそれを上回る攻撃的な言葉を返すだろう。ただしこれは、育ちのいい人には難易度が高い。言った本人に近寄っていき、とても怖い態度で追い詰めるというやり方もある。実際、バイクに乗って真顔でこどもを追い回すハリルを見たことがある(スッキリした)。「へへへへへ!」と笑われたら、まったく同じ調子で「へへへへへ!」とバカにしたような態度で笑い返すのもひとつの手だ。ただし、そのとき決して力んではいけない。あくまでもバカにした態度で軽くやるのだ。いやなことをされたら、まったく同じ調子でオウム返しすることは、けっこう効くのだから。お人好しでいやみに反撃できない人がいたら、あっけに取られて言われるがままになっていないで、これを練習してやってみてください。わたしは今回もしくじってしまったけれど。
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No Title

  • by May
  • 2015/11/26(Thu)05:59
  • Edit
スペインでもNZでも「ニーハオ」と野次を飛ばされることがありますが・・・無視を決め込んでいます。

私がkumikoさんだったらどうするだろう、と考えましたが、そちらの詳しい様子が分からないので思いつきません。トルクメンはよそ者に対してフレンドリーじゃないってことですかね。それとも単に外国人を普段見ないから?または違った服装だから?子供は残酷だから?大人も、か・・
または文化・習慣の違い?(女性は普通一人で市場をブラブラしない、とか・・)
市場をゆっくり歩いて回れないという状況は困りますね。悪気なくからかっているのか、悪意を持ってからかっているのかでも対応の仕方が変わってくるし・・
トルクメンを全撃退して、大きな顔で市場を歩ける日は来るのでしょうか~

Mayさん

  • by 砂漠人
  • 2015/11/27 20:10
ただ単に、トルクメンは根性が曲がっているってことだと思いますよ(笑)。
ハリルがそばにいたら、そんなことは許さないんですけどね。
相手がこどもでも全力で撃退してくれます
(それはなかなかうれしいことです)。

No Title

  • by ボーダ
  • URL
  • 2015/11/26(Thu)09:00
  • Edit
わはは〜 確かにみんなの注目の的ですよね。私はインド、ネパールで散々経験済みなせいか、あまり気になりませんけどね。こうなったら、みんながこんなに注目してくれてありがとうって思ったほうがいいですよ(笑)
でもね、本当に悪くないと思いますよ。街ゆく子供が自分の携帯ばかりを見て周りの人間も見なくなったら、そのほうが心配な社会です。トルクメンの子供や大人は、時間がたっぷりあって、街ゆく人間を観察しては、変わった奴がいたらちょっかいを出すようなゆとりがあるのです。もしもkumikoさんがその日調子が悪くて道端で倒れたりしたら、彼らは必死で救ってくれると思います。その反面、先進国の都会で倒れたら誰も立ち止まってくれないかもしれません。

ボーダさん

  • by 砂漠人
  • 2015/11/27 20:10
なるほど、その方面は思いつきませんでした。
たしかに人々がその場に関心を寄せているという証拠ですよね。
そう言われたら、わたしに何かあったら、誰かがなにかしてくれる
という安心感はたしかにあることに気がつきました。
さすがボーダの姉御、、、
ありがとうございます。

無題

  • by デスティノ
  • 2015/11/26(Thu)13:35
  • Edit
はじめまして、私も、スペインに20年くらい通っているのですが、
以前はチナ、チナ、それも思いっきり馬鹿にした声色で言われるので、
本当にイヤでした。
しかし、最近では、東洋人も増え、すっかり慣れたようで、街を歩いても、何も言われません。
スペインの若い人達も随分薄い、お洒落な印象の人が増えて、
日本もそうですが、消毒されてしまった感じ。
昔のえげつなーい濃ゆい感じが失われて寂しいです。
そちらはまだいい意味で地域性というのが残っているんですよ、
とはいっても、住んでる方はウンザリでしょうね…

デスティノさん、はじめまして

  • by 砂漠人
  • 2015/11/27 20:10
そうですか! ちなみにエジプトでは「シー二」だそうです。
おとなしそうな男の子がすれ違った瞬間「チーニ」とつぶやいたこともありますよ。
なんか悔しいんですよね~
おっしゃるとおり、消毒前の人間臭さが残っているというふうに
ポジティヴに考えるようにします。コメントありがとうございます!

無題

  • by Satake
  • 2015/11/26(Thu)18:28
  • Edit
NYでも何度か中国人に間違われましたが
馬鹿にされた感じはありませんでした。

東アジア人は中国人chineseっていう
世界での認知のされ方なんですね。
良くも悪くも、ですが
それは凄いことだと思います。

Satakeさん

  • by 砂漠人
  • 2015/11/27 20:13
東アジア人=中国人
今回そのことがはっきり分かりました。そうなんですね~
自分だけ中国人に見えるわけじゃないと分かり、よかったです(笑)。

No Title

  • by no name
  • 2015/11/26(Thu)23:45
  • Edit
中国は中華思想の国ですから世界の中心に中国があると思っている人は多いかも。バカにしているのではなくて反感と言う事もあるかも。
インドネシア旅行中、家族が良く「お前のかみさんはジャワ人か」と言われたそうです(笑)現地の人が道を聞いて来るし、不思議な体験をしました。
「中国人」と言われたのは以外ですが日本国内でです。どういう訳か日本人から「チャイニーズ」とか「中国の方ですか、日本語上手ですね」とか言われる私です(爆)
まあ、言われて気にしても始まらないんですよね、きっと。

昇さん?

  • by 砂漠人
  • 2015/11/27 20:14
ジャワ人のところで昇さんじゃないかと思いました(笑)。
外国では東洋人の総称が「中国人」なんでしょうね。
当たらずとも遠からずと思いました。
わたしも地元で外国人とまちがわれたことがあります。
おかしいですよね。

No Title

  • by paprica
  • URL
  • 2015/11/27(Fri)00:01
  • Edit
あははっ。面白い。私もMayさんと同じく、大学で仕事していると、通り際に「你好」をかまされることあります。真顔で「おはよー」って答えると、はっと振り返りますネ。「我是日本人」と続けてにっこりするとどぎまぎして立ち去るか、または中国語を勉強している学生だと「あぁ、ソーリーソーリー!」という展開になります。
「中国人と間違えられてむっとするのは何故だろう」という問いかけが興味深いです。あの人達と一緒にしてほしくない、っていう思いがあるのかな。チャイニーズ、って間違われるのと、チーナとかチンプとかチャイナマンとか言われるのでは、また全然違ってきますもんね。
私、上海に住んでいた時には中国人に上海人だと間違われることがよくあったんですよ。「君は僕らの仲間」として認められたような気持ちにもなり、やや複雑でした〜(笑)

papricaさん

  • by 砂漠人
  • 2015/11/27 20:14
そういえばわたしは台湾人の学生に「アンニヨハセヨ~」と言ったことが
あるのを思い出しました。彼女は変な顔して、「わたし台湾人ですよ!」って。
ごめん…。
いっそのこと、「麻婆豆腐が好きです」という中国語を覚えて返そうかな。
要は、中国人と日本人はみかけがそっくりだということでしょう。
数々の事例からして、それは認めるべきですよね~

あぁ~、面白かった!

  • by あん
  • 2015/11/27(Fri)22:21
  • Edit
そんな人種差別の実態を始めて知りましたよ、へぇ~そんなに嫌な視線が突き刺さってくるんですか!子供等まで馬鹿にする?そんな感じだなんて全然思ってもみなかったからもう吃驚で。ここの唯一の日本人女性(元ダンナはデンマーク人)がヨーロッパに住んでた時にやはりチノ(中国人!)って言ってくるヤツが沢山いたって言ってました。私が良く読む世界一周バックパッカーの方も、何かって言うとすぐチノって浴びせかけて「中国人って世界中で嫌われてんだなぁ。」って思ったそうです。

私20代の頃カナダ西部に居た時ダウンタウンを歩くと必ず「ニイハオ!」って中国人に声かけられましたけど「中国語分かりません」と言うと寂しそうに行き過ぎてました。(これとじゃちょっとニュアンス違いますね 笑)その頃日本の友人に頼まれて先に住んでいた日本人男性に「石を持て追われるごとく」という人種差別に類した本を届けたんですけど、彼は私が人種差別で嫌な思いをしてないか凄く心配してました。でも私は全くそんな事には無縁でその後もカナダの他の州、アメリカ2州とイギリスに住みましたけど、そう言った経験は一度もないんですよ。鈍感なのかしら?きっと人種差別する様な変な人が周りに居なかったんでしょうね。

あんさん

  • by 砂漠人
  • 2015/11/28 00:54
今回いろいろなコメントをもらって、世界中で同朋が「中国人」と認識されている
ことが分かり、なんとなく安心しました。書いてよかったです。
中国人が嫌われているというよりは、東アジア人=中国人だと思われているんじゃ
ないでしょうか。
ここは田舎なので、意識的な「人種差別」というより、外国人に興味津々という
ところだと思っています。中には、「非イスラム教徒」としてよく思っていない人も
いるかもしれませんが、わたしはイスラム教徒ですから~
単純にいえば、彼らは無知でワイルドなんですよ。
閉鎖的な社会の貧しい人々ですから、先進国で中国人とまちがわれるのとは
意味が違うのだと思います。それでも合言葉は「チーニ」なのが驚きなんですが。

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プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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