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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

ハリルと今後の生活

ハリルがモンゴルへ旅立ってから、十週間が過ぎた。彼はモンゴルで何をしているかというと、肉を輸出する会社を立ち上げている。まずはイランへの輸出作業を進めているようだが、将来は別の国に売る可能性もあるのかもしれない。
わたしは三月に日本に帰国してウェブショップを開店する予定を立てていたので、彼がその前に二週間だけモンゴルに行って、戻ってくるという約束だった。しかしハリルは、それから今まで戻ってきていない。わたしは日本旅行をキャンセルした。刺繍の販売が旅の目的だったので、チケットを無駄にした上に長い時間をかけて掴んだチャンスを逃し、これがわたしの怒りの原因となった。今では怒りも収まって、ただただ諦めの気持ちに変わっている。わたしの刺繍仕事はお小遣いにすらならないが、ハリルの仕事は家計、つまりこれからの生活に大きく関わっている。
ところで、なぜわたしが日本行きをキャンセルしてしまったか。それはひとえに犬猫の世話があるからだ。家は閉めていけばいいけれど、牛と羊の世話を全面的に任されたナーセル夫婦が、二ヶ所に20匹以上いる犬と猫の面倒まで見られるはずがない(見る気もないだろう)。彼らには四人のこどもと、歩けない母親もいるのだ。わたしはかなり慎重に推量し、チケットを捨てるという判断をした。犬と猫を見捨てるつもりでクミシュテペを去ってもよかったが、天秤にかけたら犬猫が重くなった。
モンゴルでの肉の仕事はまだ立ち上げたばかりで、一年くらいは現地でいろいろと手配することがあるようだ。もちろんハリル一人で仕事しているわけではなく、モンゴル側とイラン側両方にパートナーがいて、現地の人とチームを組んでやっている。しかしハリルがその中心にあるようなので、不在にするわけにはいかないらしい。そうなると、当面わたしはハリル不在のままクミシュテペでの生活が続くのだろうか。

モンゴルの工場の外で。短期間でかなり老けたようだが…

ハリルと暮らすようになって以来、「ハリルがいなくなったらわたしはどうなるんだろうか」と思わない日はないくらい、それは重要なテーマだった。彼はわたしの人生を支配してしまうほど、影響力のある人間だ。東京で仕事をしていたわたしをスウェーデンへ、イランへと導き、さらにモンゴルに連れて行こうとしている。
モンゴルは魅力的だ。司馬遼太郎のモンゴルに関する本を二冊読んだけれど、彼自身がモンゴルびいきのせいもあって、ロマンチックな幻想が広がる。しかし現実は、砂漠生活を夢見てクミシュテペに来て六年のわたしだから確信するが、そういうことではないだろう。現に、モンゴルの手つかずの自然と素朴な人間に魅せられているハリルでも、野菜やハーブ、果物がないことに参っているようだ。わたしたちにとって、生きていく上で食事の内容は一番大事なことなので、クミシュテペの生活をやめてモンゴルに移ることは考え難い。
イランでは約一ヶ月後に、ラマダン(断食月)が始まる。その前に、ハリルが帰ってこようとこまいとわたしはクミシュテペを去るからね、と脅しをかけてあるので、ひょっとすると一旦戻るだろう。その後どうなるかは、なってみないと分からない。

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  • by るぴなす
  • 2018/04/17(Tue)15:59
  • Edit
クミコさんのブログは
著名な作家さんのエッセーを読むより
楽しくて興味深いです。
「スカーフに合わせて服を選ぶ」いいですね。
異国の方の腰の高さ。。。羨望です。

るぴなすさん

  • by 砂漠人
  • 2018/04/19 02:10
なんという、コメント。本当に、ありがとうございます。
わたしも腕の長さは異国の方並みなんですが、なぜか腰から下は日本人の遺伝子が出ちゃったみたいで(笑)。コイネクで隠します。

無題

  • by 真奈美
  • 2018/04/18(Wed)06:39
  • Edit
ハリル氏はシュッとされて精悍な顔立ちになり、むしろ若くなった様に見えます。
モンゴルの大地に私も憧れますが、確かに食は大事ですよね
世界のどこにいても逞しく生きていけるであろうお二人に尊敬、羨ましく思います。

真奈美さん

  • by 砂漠人
  • 2018/04/19 02:11
ええ! 若く? 二週間の予定でパッキングしていったので、着の身着のままという感じで、なんだかかわいそうです。本人は絶対そんなことは気にしていませんが。
どこでも生きていけることを目指してはいるものの、現実はなかなか厳しいですね~

No Title

  • by Tamihime
  • 2018/04/18(Wed)09:00
  • Edit
久美子さんの将来を見据えてのビジネスなのでしょうね。
ハリルさん、異国での仕事、食事、ご苦労が伺えますが、それにも増して新しいことに取り組む意欲、尊敬します。
一度モンゴルに行ってみるのもいいんじゃないかと。若かったら、行きたい国です。
日本人の体にもMongorianの血が流れてますよね。
蒙古斑、蒙古ひだ、体に残っています。
お留守のあいだの手仕事、すごいですね。上記とは裏腹ですが、久美子さんの「砂漠の手仕事店」開催楽しみです。
日本、スウェーデン、イランと波乱万丈な人生、ブログを基に本にもなりそうだし、講演活動もできそうですね。
料理研究家や民俗学研究家、可能性広いですね。
一人で盛り上がってしまって、ごめんなさい。

Tamihimeさん

  • by 砂漠人
  • 2018/04/19 02:14
盛り上がってくださってありがとうございます。しかしどの研究家にもなれそうにないです。文献も読まなくては。刺繍は、刺し手に頼んだものです。わたしが刺したんじゃないんですよ~。たぶん、わたしなら彼女の2~3倍の時間が必要です。
わたしの将来を見据えて… いてくれれば文句はありませんが、実際は「うーん」という感じでしょうか。稼いだら全部日本に送金してほしいと思いますが、ハリルのお母さんを始め、一族も首を長くして待っているようです(笑)。手ぶらでもいいので、とりあえず戻ってきてほしいですね(そして手ぶらだったら怒る)。
イラン人には読んでほしくないことですが、わたし自身はあまりイランの文化とは肌が合わない気がしているので、モンゴルには期待が膨らみます。しかし犬猫をどうしましょう?

No Title

  • by May
  • 2018/04/18(Wed)17:38
  • Edit
kumikoさん、それで怒っていたんですね。(以前「むしろ今帰ってこられたら困る」って書いてたので、なんで?と思いました)
うちも夫が唯一の稼ぎ手なのでNZ→オーストラリア→横浜→スペイン→NZと短期間に動いてエラい目に遭ったわけです。(どこも都会という点では救われましたが、どれも仕事を辞めたり失業したり突然起こったのです)
都会であっても50代後半から60代にかけての大移動は、すごく体に来ました。
クミシュテペにやっと慣れてきたところなのにね。
”そういうことではない”と言うのは容易に想像できます。
どうなるんでしょう~
単身赴任していただく?
それとも「こんなところに日本人」にまた出る?!
ハリルは一旦戻ってくると思いますが。

でも物は考えようで、運命に導かれて行く場所は今よりいい場所かもしれません。

Mayさん

  • by 砂漠人
  • 2018/04/19 02:16
経済的に夫に頼って生きるというのは、うまくいっているときは楽ちんですが、そうでない場合は非常に不安ですね。かといって、妻も働きに出れば解決するかというと、そう単純でもありません。
たしかに、Mayさんの大移動は大きなストレスでしたね。今はNZに落ち着いて、よかったですね。

プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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