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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

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砂漠生活の終わりとブログ

 クミシュテペに来て以来、経済状況や自然環境など、いろいろなことが悪くなる一方だったので、この先どうやって暮らしていくかはいつも考えていた。二年前に半年ほど日本に住んでみたあと、やはりまだクミシュテペで暮らすのがいいと思い、その後「自分が50歳になるまではここでやってみよう」と決めていたところだった。つまり、あと四年のあいだに様子をみて、見通しが立たないならどこかへ移ることを考えるということだ。でも本当は、クミシュテペで土葬されることについても考え始めていたし、動物たちとの生活こそが自分の人生だとも思えるようだった。
 だから、ここを去ることは、不本意なことだ。しかしキャリアを再開して将来の不安を解消する機会が来たのだし、母国へ戻れるのだから、いいことのはずだ。そう考えて帰国の準備に取りかかろうとしている中、ある夜、寝るために玄関を出て二階の寝室へ向かっているときに、突然悲しい気持ちになり、涙があふれ出てきた。玄関のドアを開けると、猫たちがニャーっといって駆け寄ってきたのだ。しばらく撫でてやったりしたけれど、彼らを置いていくことが、わたしにとっては受け入れがたい苦しみだ。先に寝ていたハリルは、泣いているわたしを見て驚いたようで、この大きな変化をわたしが不安に感じていると思ったようだ。「心配するな。いつもそばにいるし、モンゴルのゲルで暮らそう」というようなことを言った。まったく安心できないその言葉がおかしくて、悲しい気持ちが一瞬ふっ飛び、笑いそうになったくらいだ。でもしばらくして、今度はハリルが泣いていることに気がついた。
 彼が泣いている理由をよっぽど尋ねようかと思ったけれど、デリカシーに欠けるのでぐっと我慢した。でもそのあとの会話でよく分かった。ハリルは、自分のことではなくて、身を粉にして働いても生活が成り立たないクミシュテペの人々を哀れに思い、彼らの将来を憂い、またトルクメンという民族の置かれた根源的な悲劇を思い、涙が出たのだと思う。それは彼の人生のテーマに深く関わっていることだ。
 わたしの悲しみの内容も、犬や猫だけではないけれど、とても簡潔に書けるものではない。希望を持ってハリルの故郷に移住し、なんとかやってきたのに、実りのないうちにここを追われるような状況が、悔しいのかもしれない。そんなこんなで、帰国までわたしの気分は揺れるだろう。しかしこれまで以上にブログに記事を書いて、自分の状況を整理していくつもりだ。
 ハリルと出会ってからスウェーデンでブログを始めて、もう十二年になる。初めはハリルのユニークなライフスタイルを記録しようと思い、イランに移ってからは、記事を書くことで、そのときどきの出来事に自分なりのけじめをつけてきたようなところがある。そして今は、砂漠生活の終わりとともに、このブログも終えようと考えている。終えるタイミングは、砂漠を去るときか、まだ書き終えていないハリルの一生についての記事を書き終えたときにしたい。

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No Title

  • by Tamihime
  • 2018/09/15(Sat)13:29
  • Edit
名前忘れのコメント、Tamihimeです。
おふたりの心中、複雑で揺れる思いに思わず胸が一杯になりました。
よく父が、「二者択一で迷った時には行きたくない道が正しい道だ。」と言っていました。
今は苦しくとも、いつかは拓かれる道と信じて進みましょう。

Tamihimeさん

  • by 砂漠人
  • 2018/09/16 14:53
はい、まずTamihimeさんじゃないかと思いました。

「行きたくない道が正しい道」
とても励みになりました。よし、やってみよう!
生活の知恵が少し身についたので(?)、今度は仕事を再開してみるつもりです。

No Title

  • by May
  • 2018/09/17(Mon)09:17
  • Edit
「行きたくない道を行く」ことを「賢明な判断」と言うのでしょうね~
私は行きたい道しか行かないので、いつもかなり遠回りをしていますが、道の途中で学ぶことがたくさんあり、経験したことで出来るようになった事もたくさんあり、ストレスも無く、ちっとも後悔はしていません。
そんな訳で私は賢者ではなく馬鹿者なんです。

最新の記事まで読みましたが、クミシュテペを去り難い想い?不本意、という感じが伝わってきます。
英語を教えていた姪っ子ちゃん甥っ子ちゃん、義理のお母さん、可愛がっていた動物たち、後ろ髪引かれる想いでしょうに・・・

Mayさん

  • by 砂漠人
  • 2018/09/18 15:35
なんだかんだ言っても、人はみな行きたい道を行くんでしょう。日本に行くのも、自分たちの意志ですけど、それを後押しするために色々と励ましが必要です(笑)。
もし十年後にここに戻ったとしても、甥っ子はまだ19歳なんです。なんだー、全然問題ないと思いました。若いって、そういうことですよね。彼を基準に考えて、希望を見出したいと思います。

無題

  • by C
  • 2018/09/21(Fri)03:42
  • Edit
猫や家や自然のことを思ったら、私も泣けてきてしまいました。
猫は1、2匹連れて帰ることもできそうですが、彼ら彼女らは望んでいないように思いますね。
複雑な想いで私もうまく説明できないけど胸がいっぱいです。

Cさん

  • by 砂漠人
  • 2018/09/22 17:12
ヨーロッパのお山から、メッセージありがとう。帰りに寄ってほしいくらいでしたが。
犬猫は、連れていくのはほとんど不可能なんです。手続きが煩雑すぎて。きっとイランからは持ってくるなってことなんでしょうね。
この家がなくなることはないし、わたしは半分イラン人(?)だから、いつか戻ることはあると思ってとりあえず日本でやってみますよ!

No Title

  • by paprica
  • URL
  • 2018/09/28(Fri)07:24
  • Edit
この記事を読みのがしていました。
砂漠の章がひとまず終わるときがやってきたのですね。喉の奥にきゅっと詰まるものを感じました。ゆっくりと時間をかけて築いてきたものや紡いできたもの、耕してきたものを基盤にしたくみこさんの今の砂漠生活。親戚のひとたちや生きものたち。上手く言えないけれど、それらの全ては毛細血管のようにくみこさんの中を流れているのだと思います。10代、20代なら、えいっ!と一歩を出してずっこけてもたやすく立ち上がれますが、40代だと色々と考えることや不安も多いでしょう。でも、仕事を再開するチャンスというのは、光る星ですよ!応援しています!
私はハリルさんのひととしての大きさにじーんとしました。そしてちょっぴりずれたハリルさんらしい励まし方に笑いましたよ。ハリルさんがそばにいれば、本当にどんな状況でも大丈夫泣きがしてきました!

papricaさん

  • by 砂漠人
  • 2018/09/29 02:55
コメントありがとうございます。
なんだか、自分で整理しきれていないことをpapricaさんやフロリダ娘さんやみなさんが書いてくれて、胸がいっぱいです。
ハリルがそばにいれば大丈夫、ハリルがいるから波乱万丈、どちらも真なり、ですね。でもとりあえず今後の一年は、自分の仕事に集中してみたいと思います。十数年ぶりに高度文明社会に属することになるので、本当に心配ですが。砂漠的ワイルドさを失わずにいられれば、だいじょうぶでしょう(笑)。

遅ればせながら

  • by フロリダ娘
  • URL
  • 2018/09/29(Sat)01:46
  • Edit
色々考えてしまって、なかなかコメント出来ずにいました...

まずイランが、イラン国民がそこまで困窮状態にある、という事がショックです。実は少し前にイランの甥っ子のお嫁さん(20代になったばかりで新婚ホヤホヤカップル)とメッセージをやり取りしていて
「イランの生活は最低!」
「みんな国外に脱出しようとしている」
「私達にも(アメリカへの)招待状を送って!」
などと、今までになくSOS感に満ちていたのでドキッとしたばかりだったのです。アメリカの経済制裁は今に始まった事ではないけれど今回はだいぶ深刻な気がして、砂漠人さんの日本移住ニュースを聞いて、本当にただ事ではないんだ...と確信しました。

そしてKumikoさんの涙、ハリル氏の涙のシーン。切なくなりました。ブログを読む側の私がこれだけ動揺しているのだから、当事者のお二人が日々色々な思いに揺れるのは当然ですし、Kumikoさんの不安もハリル氏の悔しさもひしひし伝わってきました。正直どう声を掛ければいいのか分からず、しばらく思い悩んでいましたが正しい答えなど私に出せるはずもなく、『砂漠人』を愛読してきた者として希望を書かせていただきたいと思います。

『砂漠人』はどこへ行っても『砂漠人』でしょう。スウェーデンにいる時も、日本へ移住しても、モンゴルでビジネスをしても、他の人にはできない砂漠の方法で物事を見、工夫して生きていくのだろうと思うのです。だからハリル氏の生き方と、Kumikoさんの生き方を記録し続けるブログ『砂漠人』はこれからもずっと続いて欲しいです。

そして砂漠の生き物が強く逞しく生きるように、消して恵まれた環境とは言えない所に育つ砂漠の植物のように、しぶとく、しぶとくいてほしい。草を食べ終わったら羊の群れが次の草原へ移ったり、水が足りない場所に咲いた花が種を飛ばす。ごく当たり前に環境に対応して生きている動植物。Kumikoさんのお仕事が決まったから日本へ、もそれと同じく生きるための適応、と考えてみます。今は枯れ果てたイランという国の状況も、これからどうなっていくかはわかりません。もしかしたら、巡り巡って砂漠に帰る日が訪れるかも知れません。そういう意味では愛着のある砂漠の物は、砂漠において行くのも正解なのだと思います。

フロリダ娘さん

  • by 砂漠人
  • 2018/09/29 03:09
フロリダ娘さん、コメントありがとうございます。感激しました…。
イラン国民は以前から欧米に移住したがる傾向はありましたけど、この状況下では切羽詰まっているでしょうね。国内ニュースの詳細はなぜか世界では報道されませんが、本当にひどいものです。政治も腐っているし、周りの人の生活も目に見えて惨めになってきています。国外に簡単に移住できるわたしたちは、恵まれていると考えるのが正解でしょう。だから、あまり泣き言ばかり言っていられません。二人とも、めそめそする質じゃないですしね!
『砂漠人』のことも、こんなに褒めていただいて、うれしいです。しぶとく、行くべきですね。家はナーセルたちに譲っていくことになるんですが、今日は「ここに戻ることがあれば、また家を建てればいいよ」とハリルが言いました。もう、笑っちゃうし、冗談じゃないとも思うけど、ちょっと希望が見えたのも確かです。鶏小屋を改装するか、ユルタに住めばいいと思いました(笑)。ブログはおそらく止まってしまうでしょうけど、インスタグラムとか、なにかしらネット上で繋がっておきたいですね。刺繍も見せたいし、興味を同じくする人と繋がる楽しさは、もう手放せませんから。なので、今後とも、ぜひおつき合いください。よろしくお願いします!

もうなんだか、コメントを越えてメールの世界に入ってしまいました(笑)。

プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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