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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

わたしにとっての砂漠生活とは

 クミシュテペでの砂漠生活は、わたしにとって何だったのか。得たもの、失ったものは何だったのか、ちょっと考えてみた。残された砂漠生活の時間は、あと三日となった。
 失ったものは、ずばりお金と時間だろう。経済的な側面に焦点を当てれば、七年近くになるここでの年月は、マイナス以外の何物でもない(キッパリ)。しかしそれ以外に大きく失ったものは今のところ思いつかないし、お金だって別の国に暮らしていたら、もっと多くの支出があったかもしれない。
 得たものは、大きなところで三つある。一つ目は、健康をすっかり身につけたということだ。クミシュテペは空気がよく、一年中豊かな農産物が手に入り、肉や卵は自家製、魚は漁師から直接買うことができる。最初の三年は牛の搾乳をしていたので、早寝早起きが身に着いたり、筋肉がついたり、健全な生活習慣を体得することができた。
 二つ目は、自然の摂理について、理解が深まったということだ。生物の生と死、これについては日々目の当たりにして、それがどういうことかについて自分なりの答えが出た。生きている限り、死ぬ。生きているものは、死ぬ。死ぬということは、生まれるのと同じくらい自然なことだ。書いてしまえば、どこかで読んだことがあるような文章だが、それに納得することができた。動物についてはとくに、クミシュテペに来る前は想像もしなかった考えも持つようになった。それは、たとえばペットについて。ペットというのは、飼い主がいくら大事にしていたとしても、所詮はその生きものを「おもちゃ」にしているということだと思う。つまり、性的に不能にしたり、家の中に囲ったりすることは、決して犬や猫の性質に沿った処置ではないし、彼らがそれを望んでいるはずもない。やはり人間社会に適応してもらうために、人間がよかれと思ってしている行為だと思う。そのことが正しいかそうでないかは判断がつかないし、状況によるかもしれないけれど、ペットの場合、人間は動物をおもちゃにしているということは、頭のどこかに置いておく必要はあると思う。そういう意味では、わたしも犬猫を半分おもちゃにしてしまい、そして捨てていくことを悔やんでいる。
 得たものの三つ目は、人生に対する態度だ。自分の人生に対して、あまり深刻にならないという姿勢を身につけることができた。英語で "Don't be so serious." とか "Take it easy." という感じだろうか。クミシュテペの人はもう少し深刻になった方がいいと思うけれど、わたしを含めた日本人は、もう少し気楽になってもいい気がする。そんなにまじめに働かなくてもいいし、物事を真に受けすぎな面は緩めてもいい。そう思うようになったので、少し気持ちの余裕が持てたのかもしれない。
 砂漠生活がわたしにとって何だったのか。今この時点で言えることは、これはわたしにとっての "Long holiday" だったということだろう。七年くらいの長い休暇だったのだ。そう思って、日本の社会や仕事に戻るつもりでいる。65歳でリタイアするとしたら、これからまだ二十年近く働く時間がある。二十代前半から働き続けていたとしたら、なんと四十年もの人生を仕事に費やすことになる。そのうち十年くらい、休みをとってもまったく問題ないだろう。むしろ、途中で休むくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。仕事が人生(ほかのことは犠牲となる)、これはわたしには到底持つことのできない態度だ。生きているあいだに、味わうことができる大きなものは、やはり自然じゃないだろうか。
 先日、ハリルと一緒に『人生フルーツ』という映画を観た。ある建築家が、山を切り崩した土地に造られたニュータウンの一画に土地を買い、自宅を建て、家族とともに庭を無から小さな森にしていったという暮らしぶりが描かれていた。豊かな日常、自然と人間のあるべき姿を体現しているような人たちだった。まねはできなくとも、お手本として忘れずにいたい人生だ。

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  • by May
  • 2018/10/13(Sat)18:24
  • Edit
「人生フルーツ」Youtubeのサイトに行くたびに画面に出てきていたので気にはなっていました。今まだ観ることはできませんでしたが、予告編とか(中国語の)あらすじで大体感じが分かりました。私も是非ともお手本にしたい人生です。

日本に暮らしていたら、どんなにお金を積んだって7年のホリデーは取れないと思います。40年身を粉にして働いて、さぁ!と思った時には体や心を壊して思い描いたことができない人が多いのではないでしょうか。
若いうちに素晴らしい体験ができて正解~!

生きてる限りは必ず死ぬということ、私も身近に感じるようになり、それはいい事だと思います。毎日を気分良く終わりたいと思うようになりました。

kumikoさんとハリルはこのままで終わらないと思います~~~ウフフ。
グローバルなお二人ですしね♪

Mayさん

  • by 砂漠人
  • 2018/10/15 05:51
四十年も働き続けることって、本当にしんどいですよね。途中、出産や育児までやっちゃう人がほとんどですから、すごいことです。
この先、どうなるのか。とりあえずは希望を持って、日本に帰りたいと思います。

プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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