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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

市場

いつもはハリルに任せきりの市場での買いものだが、リストを渡しても買い忘れたり買いすぎたりするので、今日は「わたしが買い出しに行くから」と本気で言ったら、午前中の買物についてきてくれた。午前中は混んでいていやだと言い、ハリルはいつも午後の遅い時間に行くのだ。それに終了間際に行くと、くず野菜などの家畜の餌が安価で手に入るようなので、それも狙いなのだろう。


カリフラワーとブロッコリーはそれぞれ1キロ95円、ほうれん草は1キロ31円。いろいろと問題のあるクミシュテペだが、新鮮な野菜がこの値段で買えるのだから、ここよりいい住処はないといつも思い直してしまう。カリフラワーはポタージュスープにし、ブロッコリーはペペロンチーノ風に炒め蒸しにした。

紫たまねぎのせいで、とてもまずそうな色のポタージュができた

ほうれん草は葉だけをちぎって軽く火を通し、ヨーグルトに入れる


ハリルは季節が終わったと思っていたザクロを見つけて喜び、たくさん買っていた。一応、途中で茶々を入れたのだけれど、「これはわたしの専門分野だからね」などと言うので放っておいた。おいしいザクロを選ぶのが得意と言いたかったのだろう。選びながらハリルは、ザクロの果実が夏のあいだに受けていた太陽のことなどを想像していたに違いない。家に帰ってさっそくザクロを割り、テイスティングしてみたら、たしかに瑞々しいのを選んだようだ。甘みは少なかったけれど、三種類あるので他も試してみよう。



ブロッガ

カスピ海の魚も一切れ買った。これはちょっと値が張るし、たぶん違法な(勝手に取引してはいけない)魚だ。ハリルは店の人に呼ばれてテントの後ろに回り、箱の中の魚を吟味していた。キャビア(卵)が入っている魚だが、実も脂がのっていて特別な味がする。この魚、ふとスウェーデンでも食べていたことを思い出した。ハリルは違法に買った魚を密輸までしていたんじゃないか? しかしヨーテボリの空港は寛大で、魚を持ってこようが、羊肉をスーツケースいっぱいに詰めてこようが、サブジやラクダの発酵乳を持ってこようが、没収されることはなかった。ただ一度、麻薬犬がやたらにうちのスーツケースに執着していたことがあって、あのときは焦った。それでも開けるようには言われなかったのだが。


午後の買物(買い足し)もバランスよく買ってくれて、今週は満足な買物ができた。キクイモのピクルスもすでに浸けたし、明日はかりん飴を煮ようと思う。

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刺繍

民芸品の製作と同時に、刺繍も再開した。わたし自身も一昨年くらいから刺繍を始めたのだが、まだまだ初心者で、バラックなどの大きなものは刺したことがない。「一万時間の法則」というのがあるらしく、それは、なにかを習熟してマスターになるまでにかかる時間のことだそうだ。わたしも死ぬまでにトルクメン刺繍のマスターになりたいけれど、この法則に従うとすると、一日1時間刺して27年、2時間刺して13年、3時間刺して9年かかる計算だ。一日1時間しか刺さないと、マスターする頃にわたしは72歳。キビシイ! 毎日3時間刺すというのも難しいだろう。2時間だったら58歳でマスターになるはずなので、このあたりを目指そうと思う。飽きっぽいわたしが十年以上続けたものは、恥ずかしながら、ブログ以外なにも思い当たらないので、もう一つくらいやってみたい。
それにしても、もし本気で刺繍をマスターしようとすると、ほかのものはもうなにもマスターできないくらいの年齢になっている。最近、ミニマルという考え方にとても興味を持っているのだが、有限の人生を意識し始める年頃だからだろう。

あいかわらずアンナックで練習している。FENDIみたいな模様だ

民芸品の方は、「鳥の翼」という模様を刺してもらったものをワッペンにする作業をしている。これは小さなトートバッグにつけることになる。


ところで「一万時間の法則」については、科学者のあいだでも正しいかそうでないか議論があって、どうやら万人に当てはまる法則ということではないようだ。一所懸命やっても刺繍以外なにもマスターできない将来というのもさみしいので、わたしはこちらのスピーチを聞いて、自分を励ました。「まあまあ良い」レベルまでなら20時間で到達できるんだって!

Josh Kaufman "The FIrst 20 Hours - How to Learn Anything"(英語)

緑豆のプディング

また一つ、自分のレシピノートに料理を加えた。今回は、デザートだ。黄色い豆を使った中華風のプディングで、材料は豆と水と砂糖のみでできる。

イエロースプリット豆

この豆を買いすぎてしまい、なんとか食べられないかと思って探して見つけたレシピだった。鉄分が豊富なので、鉄剤を飲んでいるハリルにもよさそうだし、無性にあんこが食べたかったわたしにもぴったりだ。

mung bean pudding

映像で見たとおり作ってみたけれど、水5.5カップというのが多すぎたようで、煮詰める時間は倍の50分かかってしまった。ブレンダーで混ぜたので、生地があまり滑らかにならなかったこともあるが、おおむね成功したと思う。次回は水を減らしてやってみよう。

サブジ処理に疲れたら…。でもこれを食べ切ったら、けっこうもたれた!

ところでこの黄色い豆の名前を、わたしは「イエロースプリット豆」といった表記で、日本語のレシピ本で始めて知った。イランでは一般的な豆で、煮込み料理に使われている。今回のレシピでは "peeled split mung beans" と書かれていたので mung bean を和訳してみたら、「緑豆」と出てきたではないか。イエロースプリット豆は、緑豆の皮を剥いて半分にしたものだったのだ。食材について、ひとつ理解が深まったような気がして、うれしくなった。

牛の搾乳作業

牛の搾乳作業はふだんはナーセル夫婦がしているけれど、彼らの都合が悪いときは、わたしが代わりに搾ることになっている。今日もナーセルから電話がかかってきた。頼まれてから、すぐに着替えて牧場に駆けつけ、チャチャっと牛乳を搾ることができるというのは、なかなかの技能なんじゃないの? と思うのだが、こんなことができても日本では何の仕事にも就けないだろう。それどころか、クミシュテペでもほとんど役に立たない。こんなことは、誰でもできる作業なのだから。
イランに引越してから三年くらい、わたしはハリルと一緒に牛の世話をしていた。ハリルが飼料を作ってやり、わたしが乳を搾る。これを朝晩一日二回、365日続けたのだ。もちろん風邪で寝込んだり、別の町へ出かけるために代打を頼んだこともあったけれど、それは本当に数えるほどの回数だった。おかげでついた筋肉も、今は見事に落ちているが…。
もう三年くらい前のことだが、『世界の村で発見! こんなところに日本人』という番組に出たことがあった。今思うとあの時は… といろいろ書きたいこともあるけれど、それはひとまず置いておき、ロケに来た取材班の人に頼んで、いただいた映像を紹介したい。番組では映らなかったクミシュテペの風景で、最初の方にわたしたちの搾乳の様子が出ているので、興味があったらちょっとご覧ください:



番組の内容も、自分たちが出ているのは10分くらいなのでアップしたかったけれど、そちらは映像の編集ができず、断念している。

さて、牛のいる南庭の話に戻ると、子羊がたくさん産まれていて、賑やかだった。「ンメェエエエ!」と鳴いて、母親のおっぱいを突いていた。子ヤギもスキップするように飛び跳ねて、本当にかわいい。鳴き声は、子羊よりも子ヤギの方が高くてチャーミングだ。ヤギは母親にそっくりの模様が出やすいのか、見比べるとどのヤギが母親なのかがすぐに分かった。さらに、子犬8匹も歩きまわるようになった。しっぽをブブブンと振りまくり、羊に甘えたりしていた。動きがぎこちなくて、マンガみたいでたまらない。予想外の方向へ動くので、カメラを持っていたとしても、上手に撮れるかどうか怪しいものだが、近いうちに撮ろうと思う。

コロッケ

クミシュテペでわたしが作っている和食は、カレーライスとコロッケだけ。あとはエビの刺身くらいなもので、食材がまったく手に入らないから仕方がない。最近はカレーにも「×」が出たので、もうコロッケしか日本のものは作らなくなった。ハリルには、刺激的なスパイスやカレールーが合わないようなのだ。

まずはパン粉の用意

先日、パン粉を作るときにフードプロセッサーを壊してしまった。しかしもう一つ、蓋だけ壊れているフープロがしまってあったので、出してきて恐る恐る使った。今回はパンのやわらかい中身のところだけを冷凍しておき、解凍してオーブンで焼いてから砕いたけれど、本当はもっと細かくしたい。どうしたらきめ細かいのができるんだろう? 凍ったパンをおろし金で摺る人もいるようだが、日本の食パンじゃないとうまくいかなそうだ。


コロッケの中身はじゃがいもと炒めたたまねぎ、ディル。ソースなしでもおいしいように、塩を効かせておく。


コロッケづくりは、最後の衣をつける部分がちょっと面倒だが、根気よく手を洗いながらやればきれいにできる。小麦粉をまぶして、卵液を塗り、パン粉をつける。ディルが入っていたので、途中でよもぎ大福が食べたくなった(そう見えた)。


何度も言うようだが、揚げたてコロッケは本当においしい。もっといろいろな揚げものを試してみようと思う。タンパク質が足りないので、豆の入ったものがよさそうだ。日本では作ったことのなかったコロッケも、だんだん好物になってきた。

パンに挟んで食べる




コッコの死

鶏のコッコが死んでしまった。数日前から様子がおかしいのは気がついていたのだが、群れの中でも体が一番大きい若い彼が、まさかこんなにあっけなく死ぬとは思わなかった。
彼は毎日、庭をうろついて餌を食べたり、猫の群れに混じったり、わたしの足にまとわりついたり、元気に過ごしているように見えていた。異変に気がついたのは少し前で、30cmもの段差に飛び乗れない、つまり飛ぶことができなくなっているのを見つけたのだ。それは一時的なものだろうと思って放っておいたのだが、思い返すと、体が一回り小さくなって体の色味が悪かったり、姿勢が悪く縮こまっていたような気がする。

雄鶏は背筋がすっと伸びているのが特徴なのに

ある夕方、壁を乗り越えられないために小屋に戻れず、コッコは外で夜を明かしたことがあった。「コッコは自由でいいね」などと思って放っておいたのだが、そうではなかったようだ。


不死身だと思っていたコッコが死んでしまい、ショックだし、とてもさみしく感じている。夕方、小屋まであと数メートルのところでうずくまっているコッコを抱えたら、足が冷たくなっていた。動けないようなので家に入れて、死ぬ瞬間まで首をさすってやった。しかし猫のロチを見送ったときもそうだが、動物は死ぬ瞬間はそっとひとりにしておいてほしいのかもしれない。そんな気がした。

鶏を食べる

今朝、食べるために雄鶏を一羽殺した。わたしが自分で世話をした鶏を食べるのは、初めてのことだ。犠牲祭で殺した羊の肉が終わってしまったので、ついにこの日を迎えたのだった。
わたしが鶏の世話をしようと思ったのは、あるブログで著者のお嬢さんが鶏や七面鳥などの家禽を買い、育てて大きくして売る… というのを読んだからだ。それまでわたしは「鶏は嫌い」という態度を取り続けて、ハリルが世話をしていてもあまり手伝わなかった。しかしそのお嬢さんは大学生なのに、自主的に世話をすることでちゃんとお金を稼いでいて偉いなと思い、それに感化されたのだ。不毛なこの土地で不満を多く抱えながらも、わたしはできることをしていないのだと、ずばり教えられた気分だった。
そうして意を決して世話を始めたものの、いまだに収入源にはなっていない。諸事情によりそれは仕方ないとしても、そろそろ卵だけではなく、肉も自家消費すべきだと思っていたところだ。牛も羊もそうだが、家畜や家禽は人に売るより自分が食べるのが一番いいような気がしている。その動物が、どういうふうに産まれて、大きくなる過程でどんなことがあって… と、肉になる前の生について多くを知っているのは自分だからだ。何も知らない人に、ただの肉の塊として扱ってほしくないような気持ちになる。実際それはあまりにセンチメンタルで、自分だって肉の塊を買ったときに動物の生をありがたく感じたりはしなかったりするけれど、とにかくこれが、育てる側としてのわたしが得ている一つの結論なのだ。店で買った鶏肉の質が気に入らなかった経験も加わり、今は自分の鶏を食べることは自然だと感じている。


肝心の首切りは、ハリルがしてくれた。朝一番に餌をやるタイミングで一羽捕まえて、残りの群れにわたしが餌をやっているあいだにハリルが処理した。犬や猫にも餌をやっていたのに、一匹の黄色い猫がハリルのそばを離れないのが見えた。ロミ夫だった。経験豊富な彼は、その場で落とした鶏の頭をもらったようだ。
羽根のついた鶏をどう処理するか、の写真は割愛することにする。今回は、本で読んだ知識を活用して、65℃くらいのお湯に一分、鶏を浸けてから羽根むしりをした。そうすると毛穴が開いてむしりやすくなるということだったが、本当だった。ただし、羽根は濡れてしまうので、枕などに使うことはできなくなる。


ここまで来れば、見慣れた鶏肉に近づいたはずだ。若いし、庭に放し飼いにしている鶏なので太っておらず、食べるのがかわいそうなくらいだった。

左から砂嚢、心臓、肝臓。チキンだけに、心臓が小さい!

鶏の砂嚢は、その中にある石で餌をすり潰して餌を消化するらしい。たしかに、砂を含んだ餌らしきものがぎっしり詰まっていた。しかしそれは袋ごとペロッと取り除くことができる。



解体した雄鶏はこのとおり。まずはガラでスープを取って、ボルシチを作る予定。脂がほとんどないので、羊の脂を足す必要がありそうだ。

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プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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