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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

ケーキと市場

 ケーキを焼くのは今日で最後にして、ケーキ型などをしまおうと思った。それで朝からデーツのケーキに取りかかったのに、集中力が足りなかったのか、凡ミスを犯した!

表面を削ぎ落とせばだいじょうぶ

 ケーキの上面がすっかり焦げてしまったので、あらためてデーツを水に浸けたりして二つ目の準備をした。このケーキを冷凍しておいて、帰国の道中に携帯しようと思っていたので、ちゃんとしたのを作り直したかったのだ。

二つ目は完璧です

 イランに来てからパウンドケーキは本当によく焼いたし、いろいろな果物を使って作ることができるようになった。ナーセルに、日本でもケーキを作っていたのかと聞かれたけれど、たしかにわたしは東京でも焼いていた。その名も「ストレスケーキ」。パウンドケーキなのだが、仕事から帰って夜中にストレス発散のために焼いていたから、同僚がそう命名した。ケーキを焼く作業は、決まった材料を決まった量で決まった方法で扱い、型に入れてオーブンに入れるという、一種の工作のようなものなので、黙々と作業できる。そしてクライマックスは、ケーキが焼けてきてオーブンの中で膨らんでいる様子を見ながら、その香りを嗅ぐところだ。食べるところは、わたしにとっては最重要ではなかったが、翌日職場に持っていって食べたり、同僚に配ったりしていた。そんな日々にまた戻るのだろうか? いや、それはないだろう。当時よりは生活力が向上したはずなので、ストレス「レス」な人生になるに違いない。


 今日は最後の水曜市場に出かけてきた。日本へ持ち帰るための刺繍糸と針を買い足し、スパイスを買い、それからハリルと一緒に日常の買いものをした。市場の品物は、すべて値上がりしている。2~3倍は普通で、5倍以上になったものもあった。すでに多くの人は、食べるものが満足に買えていないはずだ。これからもっと暮らしにくくなっていくのだろうか。


小さな命も、がんばれよ!

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犬と猫

 雨が降り、気温が10℃くらい下がった。寒がりの猫たちは冬を感じて不安になったのか、やたらに家の中に入ろうとしてくる。毎年、寒くなると弱い猫を家に入れていたので、今年の冬は彼らにとって過酷な状況になるだろう。なんとかがんばって生き抜いてほしい。
 数日前に、新しい猫が庭にやってきた。三毛猫で、ハリルは以前うちにいた猫だなどと言っていたが、そうではない、初めて見た猫だった。しかしその猫は、鼻が完全にもがれていた。頬の一部もなくなっていて、顔の正面から犬にかじられたんじゃないかと思う。それでも血は止まったようだし、食べることも鳴くこともできるので、一命はとりとめたのだろう。どこから来たのか、ここは安全地帯だと思ったようだ。今日は手洗い室で子猫のとなりで寝ていたし、餌の時間には群れに交じって食べていた。キティは他の猫に対してものすごく攻撃的な態度をとるのだが、傷ついた猫には手を出さなかった。猫たちは、弱いものはそれ以上いじめないということを自然に身につけているんだろうか。
 この家で過ごすのは、残り七日となった。はっきり言って、結婚式場から駆け出す花嫁の気分だ。これが結婚だったら確実にキャンセルしているが、自分で決めた帰国なので覚悟を決めるしかない。こちらもあちらもなんとかなるだろうけど、犬と猫のことだけはどうにもできない。

大きくなりました

チーちゃん。怒ってる?

モノ

 サロンに置いてある棚を整理していて、巾着袋がたくさん溜まっていたことに気がついた。すべて自分が作ったものだ。

意外と少女趣味だった?

 袋の中には、イヤホンや充電ケーブル、パソコンのマウスや家の鍵などが入れてある。外付けハードディスクやICレコーダーなんかもある。この家に置いていくものと、日本に持ち帰るものを分けて、それでも袋は余ったくらい。


 この棚も、棚に置いたものも思い入れはあるけれど、このままにしていこう。しかしこれだけはどうしたらいいものか、迷っている。

メガネスタンド。このあいだ持ってきたばかりなんだけどな~

砂漠人6

 しつこいようですが、ハリルの生い立ちについて、書き始めました。新しいブログを作ってそこに書き込んでいくつもりなので、よかったら読んでみてください。

砂漠人6:http://sabakujin.blog.jp/

 新しい砂漠人ブログの内容は、ハリルのライフ・ヒストリーに限ることになりそうです。草案として書くので、どんどん書いたり修正したりします。政治的にリスクのある内容はブログでは公表しませんが、まとめた暁には差し込むつもりです。
 感想などを送ってくださる場合、Eメールにて個人的にお願いします。送り先は、sabakujinあっとgmailどっとcomです。
 勝手なことばかり言っていますが、もしご興味があれば、どうぞ。

刺繍

 刺繍の新しいプロジェクトに取りかかっている。また、カーテンを留めるタッセルだ。これまで刺したことのない模様だが、サイズをばっちり計算して作図したので、前回よりうまくいくだろう。


 トルクメン刺繍はまず、枠となる線を緑色の糸で刺繍することから始まる。その次に、黒い糸で模様の枠線を刺繍することが多い。ここが一番、忍耐のいる仕事だ。黒がよく見えないし、同じ形で長い距離を刺さなければならないので、退屈で仕方がない。でも枠線なので、正確に刺しておかないと、残りの色を入れるときにつじつまが合わなくなり、困るのだ。

ひたすら黒い糸で枠線を刺す

現在、黒が2/3ほど終わった。いや、二本あるからまだ1/3だ!

 この模様は、アンティークの帽子からまねしたもので、義母に見せたら「アチャル(鍵)模様」だと言っていた。早く色を入れたいけれど、タッセルは二本あって同時進行するつもりなので、まだまだ黒との闘いが続く。
 最近になって、ようやく刺繍作業に手ごたえを感じ始めた。図案の配置やスティッチなど、一段階上のレベルで習得できたという気がするのだ。このタッセルを仕上げることで、それを自分に証明したいと思っている。

雑事

 残るクミシュテペの日々は少ないけれど、いつもどおり過ごしている。食事やお茶の支度、鶏の世話、犬猫の餌、庭の手入れなど、特別なことはなにもない。

青りんごでジャムを煮た

 庭のトイレの小窓につけた網戸が壊れたので、直した。もう放っておこうかとも思ったけれど、一日でも網戸がないとトイレに蚊が入ってきて、おしりを刺されるんじゃないかと気になるのだ。ほとんどの家はトイレに蚊がいるはずだが、トルクメンはそんなことは慣れっこで、誰も気にしていないだろう。それにしても、今年の夏は酷暑だったので蚊が少なかった。

暴風で飛ばされて壊れた、手製の網戸


新しい網を張って窓枠に押し込んだ

 我ながら、よく作業すると思う。こういう面で、わたしはめんどくさがりではない。後回しにせず、いそいそと動くのだった。

活発になってきたキティの子猫たち。作業を邪魔してくれた

 今日はハリルの妹の家に呼ばれて(押しかけて)いたので、ケーキを焼いて持っていった。ごちそうは、びっくりするほどおいしい野鳥のチェクディルマだった。あまく、脂がのっていて、この味は知っているけれど何だろうと考えて、紅茶の煮豚を思い出した(味覚と表現が貧弱ですみません)。
 デーツのケーキを焼いたのだが、今回は初めてラップを巻いて持って行った。このラップを手に入れるまで、六年くらいかかったと思う。どこで買うのか分からず、ハリルに伝えても要領を得ず。でもなんのことはない、日用品を買っているいつもの店で普通に売っていたのだった。
 筒形の芯に巻かれたラップは、やわらかめで伸びるタイプだが、どこが始まりか分かりにくいし、それを剥がすのも一苦労。なんとかまっすぐに置いて、はさみで切るとこうなる。



 もうすぐこういったポンコツさともお別れだが、クミシュテペに日本のサランラップを見せてやりたい。しかしあれを作るために、旭化成やクレハの社員が真剣に研究しているのだとしたら、それは本当に必要なことなんだろうか、とも思ってしまう。

お向かいさんたち

 お向かいのおじさんが亡くなった。家の前の道路を挟んだお向かいで、数年前に亡くなったアフーンのお隣さんだ。ハリルより、よっぽど若いはずだ。おじさんはその敷地内で牛を飼ったり作物を植えたりしていたので毎日来ていたが、自宅は町のどこかにあり、家族はそこに住んでいるそうだ。彼はアヘンの常用者で、敷地内に建てた小さな家からは毎晩煙が出ていた。しかしある日、警察が犬を連れてその家を捜索しに来て以来、おじさんはピタッと来なくなった。それからだいぶ時間が経ち、また元の生活に戻ったようだったが。
 アヘンの常用者だからといって、近所としてとくに迷惑をこうむったことはない。おじさんはいつも穏やかな表情をしていたし、黙々と仕事をしているのが見えただけだ。壁越しに、ゴミを通りに投げるのは悪癖だったけれど。しかしハリルが言うには、彼は麻薬のディーラーでもあったらしい。訪ねてきた人に大きな塊を渡していたのを見たそうだ。
 彼の親戚に、エビの養殖場で働いている人がいるそうで、おじさんは先日、砂漠にある養殖場に日雇いで出かけた。そしてその晩泊って明け方に帰る際、お土産にエビをくれと頼み、エビの袋を持ってバイクで帰ってきた。その途中、エビの袋を落とし、そして本人も崩れ落ちた。人が助けに駆けよったときは、すでに息絶えていたという。

 おじさんの隣の家は、数年前にアフーンが亡くなった後、奥さんと二人のこどもが家を空けがちになった。奥さんの実家で暮らしているからだ。ときどき戻ってきても、一家で結婚式などのお祝いに出かけることも多く、うちはいつも「家をお願いね」と言われていた。奥さんは普段から話好きなので、あちこちで噂話を聞いては持ってきてくれた。ハリルが聞いてきたお向かいのおじさんの死もそうだが、クミシュテペの人たちは人づてにニュースを知ることができる。その伝達の速いことと言ったら!
 断食明けのお祝いの際、訪ねてきたアーフンの奥さんに日本から持ってきたロボット掃除機を見せたら、数日後に別の奥さんを3~4人連れてやってきた。ロボット掃除機の噂話をしたのだろう。そしてみんなで「見に行こう!」となったのだろうが、さすがに玄関口で断った。「そんなことしたらクミシュテペの人がみんな来ちゃうじゃない!」と言ったら、「ほんと、そのとおりね」とアーフンの奥さんは言った。素直で、決して人を責めたりしない、気のいい人でもあるのだが。

プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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