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砂漠人5

トルクメンサハラの暮らし

   

思い出の品

 家の中にある荷物の整理が悩ましい。前回の日本帰省の際は、これからずっとイランで暮らしていくんだという決意のもとに、実家に置いてある荷物を大幅に断捨離してきた。断捨離だったのだからそれはいいとしても、こちらに運び続けてきた多くのものをどうするか、それが問題だ。
 基本的には、すべて捨てたと思って手放すしかない。いつイランに戻ってくるのか、戻ることがあるのかどうかも分からないので、ものをしまい込んでおくのは避けたいところだ。すでに捨てたり、誰かが使えそうなものはあげる方向で作業している。しかし持って帰れないけれど、誰にもあげられない、と迷うものがある。



 1リットルくらいのお茶を煎れることができるこの急須は、ヨーテボリから持ってきた思い出の品だ。毎週末、通っていたフリーマーケットで、あるペルシャ人(イラン人)の奥さんが欲しがっていたところにわたしたちが通りかかった。彼女はこの中国風の急須が気に入って旦那さんに買ってほしいとせがんでいたそうだが、旦那さんは「そんなのよりもっといいのを買ってあげる」と言って、目もくれなかった。そこですかさずハリルが手に取り、さっと値段交渉をして買ってくれた。わたしもその色かたちが気に入ったので、手に入ってとてもうれしく、大事に使っていた。
 それをわざわざイランに持ってきたというのに、使い始めてすぐの頃に、蓋を落として割ってしまったのだった。長いあいだ接着剤でつけて使い続けていたけれど、ついにはブロ友のTamihimeさんが金で継いでくれた。


 彼女はまだ練習中だから、と謙遜していたけれど、金の模様がついてもとどおりになり、わたしはとてもうれしく思っている。そしてこうやって直してもらったことが、この急須の二つ目の大事な思い出となった。だからこれを誰かにあげたりすることは、到底できないのだ。
 しかしヨーテボリから食器などを運ぶ必要はなかったと少し後悔したので、今回は持っていくのをよそうと思っている。倉庫部屋の奥深くにしっかり梱包して、お宝として置いていこうと思う。万が一、戻ってきたときには一杯目のお茶をこれで煎れたい。

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モンゴルスタイル

 ハリルが散髪して髭も剃った。彼はいつも自分で散髪をする。髭や爪がすぐに伸びると嘆いているけれど、それはハリルが働き者だからだろう。髭剃りが終わってよく見たら、今日は口ひげがいつもと違うデザインになっていた。

馬蹄型?

 「なんのデザイン?」と尋ねると、「モンゴル」という。さっそくググってみたけれど、こんなモンゴルは見つからなかった。色々なモンゴルスタイルがあるのだそうだ。
 いよいよあと三週間ほどでわたしは日本行きの飛行機に乗るのだが、ハリルも同行できることになった。モンゴルはもう雪が降っていて、冬が始まったようだ。モンゴルから肉を輸入する仕事はまだ続いているけれど、ゼロからの事業なので問題が山積みのよう。でもまだリタイアせずに、大いに働いてもらいたいと思う。日本でやることもなく過ごすハリルは、らしくないと思うので。
 

 鶏の世話をするようになって、一年以上経っただろうか。今は食べる分には困らないくらい卵が取れるし、雛も順々に生まれて育っている。途中、死んでしまうのもいるけれど、それは仕方のないことだ。どの動物も、群れの中には強いものや弱いものが必ずいて、すべてが同じように育つわけではないようだ。弱いものは特別にケアをしても、生き延びないことの方が多い。死んだ雛は、犬のタロ子・ジロ子にやるけれど、大きくなって庭に出している雛が死んだ場合、タロ子・ジロ子には見せず、南庭の犬に持っていってもらう。庭を歩きまわっている雛を食べる癖がついてしまわないように、注意している。

二階が雛用、一階は鶏用の小屋。日中は庭に放し飼いにしている

 昨日、一羽の雌鶏が雛を孵した。卵を割った五羽がピヨピヨ、雌鶏の下で動いているのを確認したのだが、今日は親子で外に出て歩いていた。雌鶏が座っていたかごの中には割れかけの卵がもう二つあり、一つは雛が出かかった状態で死んでいた。雌鶏は新米だからか、その卵を潰してしまったようだ。


 この大きさの雛が外を歩くと猫に狩られてしまうので、急いで小屋の二階へ移した。雌鶏と卵も一緒だ。
 そういえば先日、また雄鶏を殺して食べた。どれを殺すかは、事前によく考えて決めていた。茶色の雄鶏が三羽いて、その中で一番大きいのが、雛の頃から目をかけていて、立派なリーダーとなった茶色い雄鶏。それによく似た雄鶏が一羽と、少し痩せているのが一羽だ。少し前に痩せているのを捕まえて殺そうとしたら、ものすごい悲鳴を上げた挙句、押さえていたハリルの手から逃げてしまったので、今回は二番手の茶色を殺すことにした。
 わたしが捕まえて、ハリルが首を落とした。雄鶏が悲鳴を上げているあいだ、わたしは離れたところで残る鶏たちに餌をやっていた。そして何気なく眺めた目の先に、二番手の茶色の雄鶏を見かけた。それはつまり、たった今悲鳴を上げて殺されたのは、わたしがずっと目をかけていた彼だということだ。とても美しく輝く赤茶色で、大きな体に育っていたのに。今度はわたしが悲鳴をあげて、「ひぇ~! 友達を殺しちゃった!」と言った。けれど、そのあとよく考えたら、彼を友達だと思っていたのはわたしの思い込みに過ぎないし、彼自身はただの鶏だったのだから、いずれ食べられてしまう運命だったと思い直した。動物たちの運命に、いろいろなストーリーをつけて考えているのはわたしの想像に過ぎない。彼らはまた別の次元で生を生きているのだろう。しかしどおりで、逃げ惑う鶏たちの中で、彼がわたしの目の前におとなしく座っていたはずだ。やはり信頼関係はあったのだからね。

季節の変わり目



 市場での買物も、ブドウやザクロなど、秋らしい内容になってきた。先週はわたしも市場に繰り出して、スパイスや刺繍糸を買った。学校が始まる時期なので、文房具や靴などを売る店がたくさん並んでいた。刺繍糸は、3,000トマンで買っていたものが5,000トマンに値上がりしていた。

ドアから覗くキティ

 気候が変わり、朝晩は肌寒くなってきた。少し前にキティと三匹の子猫を外に出したのだが、キティは一日に何度もやってきて家の中で餌を食べたがる。少しずつ、家に入れる回数を減らし、餌も外でやるようにしている。


 今はトイレの横の手洗い室に、三匹の子猫を移した。家の外階段の下に囲っていたら、暴風雨が来たときにびしょぬれになって怖がっていたので、雨風をしのげるここならだいじょうぶだろう。黒いのは、トルクメン語で錆を意味する「ポス」という名前をつけた。


 夕方の餌の時間になると、犬猫たちが玄関前に大集合。わたしが出入りするたびに、餌だと思って「ニャーーー」とわめいている。餌は鶏肉をやっているので、鶏たちが小屋に入ってからじゃないとあげません。犬>鶏>猫の順に強いので、鶏がいると、猫は餌を横取りされてしまう。

ペンキ塗り

 帰国まであと一ヶ月。身の回り品の整理のほかに、しようと思っていることがひとつある。それは、二階の整備だ。二階に住んでいたときは、壁にセメントを塗ったままのひどい状態だったけれど、地上階に移った後に職人を入れて、壁を白くした。あとは木製のドアと鉄製の階段にペンキを塗り、床にカーペットを敷けば完成なのだが、そのまま何年も放ってあった。これをやり遂げてから行くつもりだ。

玄関から東側を望む。奥にキッチン

玄関から西側を望む。奥に寝室など四部屋ある

西側から見通したところ

 西側に向かい合った寝室が二部屋と、その隣に納戸が二部屋あり、その四枚のドアを白く塗るつもりだ。一枚はすでに完成して、取り付けもした。

寝室の中から廊下を望む。涼しいので今はここで寝ている

三階バルコニーへ続く階段。これは黒く塗るつもり

 カーテンレールも買ってあるので、それも取り付けておきたい。これだけの作業はやりがいはあるけれど、完成させたところで、もうここには住まないのだから、空しい気持ちが止むことはない。しかも任せていくナーセル家族は物事の管理が上手ではないので、想像しただけで泣けてくる。いや、管理をしてもらえるのはありがたいことだと思わなければならない。号泣。

庭の様子

 果樹の根元に置いた枯草が腐り、そこから虫が大発生したことは以前に書いた。どうやらその虫は、Harlequin cabbage bug のようだ。アメリカに住むボーダさんが教えてくれた。
 キャベツやブロッコリなどの葉物につく虫だそうだが、うちの庭にそれらは植わっていないし、果樹がダメージを受けた様子もないので放ってあり、そのため庭中に赤い点々(その虫)が散らばっている。オシロイバナにもついているのだが、葉がやられた様子もない。

追記:
 庭に大発生した虫は、Harlequin cabbage bug ではなくて、firebug だった。Harlequin bug もよく似ていたのだが、firebug を見ると、そのものだ。Firebug は、mallows の種を食べると書いてあるが、この植物は春にうちの庭に群生していた。自然はよくできているなあと思った。mizukiさん、ありがとうございます。
 検索しているついでに、見つけたものがある。冬に咲いていた野草で、好きな花があったのだが、これは wild watermelon のようだ。うちの庭に果実は見当たらなかったけれど、花や葉はまったく同じだ。その写真は、ここで見つけた。

真上から見たところ。虫はいるけど葉はきれい

溜めた枯草をくぐり抜けて生えたオシロイバナ

 夏のあいだ、果樹には毎日水をやったので、一つも枯れずに秋を迎えることができた。このあとどうなるかは、ナーセル一家にかかっている。

りんご、柑橘類、オリーブなど


 ネクタリンの木は、いつのまにかわたしの身長ほどに伸びたのもある。花が咲くようになったら、トイレまでの道がすてきになるだろう。


 強風で折れた桑の枝は、小さく切って水に挿しておいたら、ほぼすべてが芽を出した。これを土に植えたらいいんだろうけれど、このままナーセルの家に持っていくつもり。

キティの子猫たち。固形の餌をやり始めた


 タロ子の子犬は「タロー」と命名したのだが、先日ガチガチが死んで、その名をつけようとハリルが言った。ガチガチに似ている模様だし、そうすることにした。しかし「ガチガチ」は、トルクメン語で「シッ! シッ!(そこをどけ)」の意味なんだよな。

基本的にうちの庭は鶏園です

刺繍

 前回の大きな刺繍の次に、また別の大きな模様を刺そうと思っているのだが、そのためにはまず布地を用意しなければならない。作るものを決めて布を裁断し、縫って、そこに図案を描く。それから糸を撚って、初めて刺繍に取りかかることができるのだ。


 以前に用意してあった余り布(図案入り)があったので、とりあえずそれを刺してみた。6センチ四方の模様ならば、二日で刺すことができるようになった。

また、巾着袋

 小さい模様だけに、配色を決められず、義母に聞きに行った。さすが義母、適格なアドバイスをくれた。赤と白の周りの点々は「アーラジャ」と呼ばれる模様なのだが、その色みはよかったかどうか、義母に確かめるまで自信が持てない。日本に行ったら、刺繍の先生がいなくなってしまうのでどうしたらいいんだろう。

プロフィール

イランのトルクメンサハラに移住した日本人クミコです。中央アジアの少数民族トルクメンの夫と、その家族や動物との日常を綴ります。
2006年にスウェーデンで始めたこのブログは、4回引越をして今に至りました。過去のサイトはリンクより閲覧できます。

連絡先:sabakujin at gmail dot com

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